日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は「平均年金受給額」について見ていきます。
夫婦の年金額「2040年に25万円、2060年に32万円」…国の試算に疑問符 ※画像はイメージです/PIXTA

平均受給額…国民年金は月5万6049円、厚生年金は月14万6162円だが

――将来、いくら年金がもらえるのだろう

 

この疑問、不安は全世代共通のものでしょう。厚生労働省『令和元年度 厚生年金・国民年金事業の概況』によると、国民年金受給者の平均年金額は月5万6049円、厚生年金保険受給者(国民年金+厚生年金を受け取れる人)の平均年金額は月14万6162円。

 

月額受給額の金額別分布を見ていくと、国民年金の場合は「6~7万円未満」が受給額のボリュームゾーンで18.19%。また受給額が平均以下の5万円未満は41.55%と、5人に2人は平均以下という水準です。一方、厚生年金の場合、10万円に満たない人が20%を超え、平均受給額の14万円以下は2人に1人の水準です。

 

ただこれは現在の受給額の平均値。これから年金を受け取る60代は近似値として参考になるでしょうし、10年ほど後に年金生活に入る50代も「まあこんなものか」と感じるものでしょう。ただ20年後の40代はもちろん、30年後、40年後という20代、30代の人にとっては、「自分たちが年老いた時はどうなるのか」「そもそも年金なんてもらえるのだろうか」などとかえって不安が大きくなるかもしれません。

 

厚生労働省では、厚生年金保険法及び国民年金法の規定により、少なくとも5年ごとに、国民年金及び厚生年金の財政の現況及び見通しの作成(財政検証)を行っています。最新となる『2019(令和元)年財政検証結果レポート「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し」』では、経済成長率と労働参加の進み具合などから、6つのケースについて年金額をシミュレーションしています。全6ケースは、以下の通りです。

 

■経済成長と労働参加が進むケース

ケースⅠ 実質経済成長率0.9% 厚生年金の所得代替率51.9%*1

ケースⅡ 実質経済成長率0.6% 厚生年金の所得代替率51.6%*1

ケースⅢ 実質経済成長率0.4% 厚生年金の所得代替率50.8%*1

 

■経済成長と労働参加が一定程度進むケース

ケースⅣ 実質経済成長率0.2% 厚生年金の所得代替率*1(50.5%)46.5%*2

ケースⅤ 実質経済成長率0.0% 厚生年金の所得代替率*1(50.5%)44.5%*2

 

■経済成長と労働参加が進まないケース

ケースⅥ*3 実質経済成長率-0.5% 厚生年金の所得代替率(50.5%)0.5%*2

 

*1給付水準調整(マクロ経済スライドによって給付水準が調整される期間。平成21年財政検証(基本ケース)では、平成24年度から開始し、報酬比例部分は平成31年度、基礎年金部分は平成50年度で終了する見通しだった)終了後の標準的な厚生年金の所得代替率(公的年金の給付水準を示す指標。現役男子の平均手取り収入額に対する年金額の比率により表される)

*2所得代替率50%を下回る場合は、50%で給付水準調整を終了し、給付及び負担の在り方について検討を行うことと されているが、仮に、財政のバランスが取れるまで機械的に給付水準調整を進めた場合

*3機械的に給付水準調整を続けると、国民年金は2052年度に積立金がなくなり完全な賦課方式に移行。 その後、保険料と国庫負担で賄うことのできる給付水準は、所得代替率38%~36%程度