地方都市だが、インフレがエグい…中小企業会社員の嘆き
急激なインフレで家計が厳しくなる庶民だが、マスコミ報道では、大手企業を中心に気前のいい賃上げの話が聞こえてくる。
「そんなの、まったくの他人事ですね」
中国地方の中小企業勤務の鈴木祐一さん(仮名・47歳)は深いため息をつく。鈴木さんの給与は月収40万円、賞与も含めた年収は580万円程度。
「地方では悪くない額です。ただ、ここ数年間、賞与は多少増えているものの給料はサッパリ。こっちは物価が安いと思われがちですけど、最近のインフレは本当にエグい。賃上げの実感なんて、まったくないです」
厚生労働省『毎月勤労統計調査』2024年12月(確報)によると、現金給与総額は61万7,375円で前年比4.4%増、所定内給与は26万5,046円で2.6%増だった。一般労働者に限ると、現金給与総額は83万7,851円で前年比4.7%増。そのうち所定内給与は33万6,517円で前年比2.8%だった。これを見ても、賞与などをもって賃金アップを実現させているケースが多いことが見て取れる。
一方、現金給与総額指数を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)で除して算出する実質賃金では、5人以上企業で前年比0.3%増で2ヵ月連続でプラスを記録。30人以上企業に限ると前年比0.6%増で、4ヵ月連続でプラスを記録。これを見ても、賃上げはやはり大企業主体だといえそうだ。
「とにかく、生活が苦しすぎて…」
東京の有名私大に娘が進学、貯金はみるみる減っていき…
鈴木さんの厳しい台所事情には、子どもの教育問題も大きく影響している。
「長女は都内の有名私立大学に通っています」
鈴木さんの長女は、地元の偏差値やや高めの公立高校出身だという。最初は地元の国立大学が第一志望だったが、勉強のできる幼馴染が東京の有名大学を受験すると知り、自分も受験してみたいといい出した。
「妻が〈こんな機会はもうないし、わがままを聞いてやったら〉といったんです。現状ではとても手が届かないレベルだし、受験するだけ無駄だと思ったのですが、一生に一度の機会だから、許してやるかと…」
ふたを開けてみると、優秀な友人は不合格で、鈴木さんの長女がまさかの合格。
「娘に〈あの大学で勉強したい〉と泣かれ、妻からも〈パートを頑張るから、許してやって〉といわれ、私が折れました」
いい大学を出れば、将来の選択肢は広がる。
しかし、奨学金を背負ったり、アルバイトに忙殺されたりすれば意味がない。不安なく勉強に集中できる生活が必要。
女の子を、安普請のアパートに置くのは危険。セキュリティの整ったところに住まわせないと――。
「私立理系ほどではないにしろ、それでも学費は高額です。多少のアルバイトはさせても、勉強時間が確保できるように仕送りは必須。住まいは最低限オートロックのマンションの2階以上…。長女の大学生活のために、お金はどんどん減っていきました」
鈴木さんは、数年前に父親を亡くし、1,000万円程度の現金を相続していた。それを知っていた妻は、長女への援助を強く求めた。
「給料が上がるめども立たないし、退職金もわずか。だから、老後資金にするつもりだったのです。しかし、長女の教育費で、ほとんどなくなりました…」
私立大学の文系学部の場合、初年度にかかる費用は平均120万円程度。全国大学生活協同組合連合会の調査によると、大学・下宿生の仕送りは平均70,120円(2023年)。また、日本学生支援機構の調査によると平均9万1,408円。これらから、7万~9万円が、ひとり暮らしをする大学生の子どもへの平均的な仕送り額だといえる。
【入学先別初年度の教育費】
国立大学…28.2万円/53.6万円/81.8万円
公立大学…39.1万円/53.6万円/92.8万円
私立大学文系…22.6万円/81.5万円/14.8万円/118.9万円
私立大学理系…25.1万円/113.6万円/117.9万円/156.6万円
私立大学医歯系…107.6万円/288.3万円/93.1万円/489.1万円
※国公立大学数値、左から、入学費/授業料/初年度教育費
※私立大学数値、左から、入学費/授業料/施設設備費/初年度教育費