年金月38万円の元共働き夫婦、妻の表情がさえないワケ
2019年に衝撃を持って受け止められた「老後資金2,000万円」問題だが、ここ最近「本当の不足金額は倍の4,000万円」とのうわさが出て、多くの人が不安を募らせている。この情報の出所は報道番組のようで、恐らく番組内で話を面白く盛ったのだと思われるが、人々の心の中に澱のように沈んでいた、円安・インフレ・長生きにまつわる懸念が刺激され、改めて不安が再燃した格好だといえる。
実際のところ、インフレの進行や長生きリスクを考慮しても、老後資金の不足金額が倍になることはないと思われるが、心配性の日本人の多くは「万一」に備えて、さらに財布のひもを固く引き締め、質素倹約に努めるのではないか。
自宅で母親を介護する60代の鈴木さん(仮名)はうつむく。
「うちの年金は、夫と私を合わせて月38万円。自宅もありますし、経済的には大きな問題はないのですが…」
いま、自宅では鈴木さんの90代の母親を在宅介護しているという。
鈴木さん夫婦の自宅は横浜市の郊外。勤務先の同僚だった2人は20代半ばで結婚。それぞれ別部署だが、ともに定年まで勤めあげた。子ども2人はすでに独立して家庭を築いている。
鈴木さん夫婦は、下の子どもが小学校に入学するタイミングに合わせ、現在の家を購入・引っ越した。
「勤務先はそこそこの規模ですが、お互い出世したわけでもなく…。子どもたちの教育費と家のローンのやりくりを頑張り、なんとか世間でいう老後資金の準備をクリアしました」
60歳の定年退職後は65歳まで嘱託社員として働き、その後は家を売却して車も手放し、駅近くのコンパクトなマンションに引っ越す。家の売却代金が余ったら、老後資金に回す…というのが、夫婦2人が思い描いた人生設計であり、実際、定年退職直後までは計画通りだった。