今週の注目点=「3度目の介入」はあるか!?
今週は、年初来の米ドル高値、160円更新を巡る攻防が最大の焦点。そこでまず注目されるのは、4月29日、5月1日に続く、日本の通貨当局による3度目の米ドル売り介入の有無になるでしょう。
上述の米財務省の外国為替報告書の説明のなかでは、「介入はまれであるべきで、事前の協議が適切」と、日本の通貨当局による2度の介入の後から、イエレン米財務長官が何度か繰り返した発言を再確認しました。こういったことから、日本に対して「介入に頼り過ぎ」といった懸念を米通貨当局が抱いている感じはあります。
その一方で、日本の介入は、輸出を有利にするための自国通貨安誘導ではないとしており、今回の自国通貨安、つまり円安阻止の介入自体を否定しているわけではなさそうです。以上のように見ると、米国の反対で円安阻止介入ができなくなったということではなく、160円の円安値更新で円安が加速するようなら、「3度目の介入」もありうるのではないでしょうか。
ところで、米ドル高・円安の主導役と見られる投機筋の米ドル買い・円売りも、かなり「行き過ぎ」懸念が強くなっている可能性があります。投機筋の代表格である、ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、6月11日現在で、売り越しが13万枚となっており、すでに2023年のピークと肩を並べる水準まで拡大していました(図表3参照)。
これまで見てきたように、その後一段と米ドル高・円安が広がったことから、投機筋の円売り越しも拡大している可能性が高いでしょう。そうであれば、さらなる米ドル買い・円売りの余力は限られ、介入など何かのきっかけで米ドル安・円高に反転した場合は、ポジション調整の米ドル売り・円買いが広がる可能性もあるのではないでしょうか。
そもそも、米ドル/円は先週金曜日にかけて8営業日連続の陽線となっており、今週中に陰線(米ドル安・円高)に転換する可能性は高いと考えられます。円の安値更新や介入などの動き次第では、上下に荒っぽい値動きになる可能性も注意する必要があるでしょう。とくに、介入があった場合は、経験的に一日で最大5円、米ドル安・円高に戻るのがこれまでの基本でした。
以上を踏まえると、今週の米ドル/円の予想レンジは、「3度目の介入」があった場合も考えたうえで、155~162円といった具合に広めのレンジで想定します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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