10年後、多くの保有国債が満期だが…
「流動性」相当分の国債保有は続く見込み
[図表8]は、日銀の保有国債を償還年ごとに並べたものです。
そうしますと、いまから10年後の2034年には、保有国債の多くが満期を迎えることがわかります。また、いまから5年後の2029年には、保有国債の約半分が満期を迎えます。
ただし、日銀が保有国債をすべてなくすかといえば、そうではありません。
家計には現金(発行銀行券)という流動性が必要であり、市中銀行には規制に対応するため、日銀当座預金という流動性が必要です。合わせていえば、経済規模(≒モノやサービスの取引額)が大きくなったり、銀行の規模が大きくなると、必要な流動性は増加します。
現金や当座預金は日銀が発行する負債であり、日銀が新たにこれらを発行/供給するためには、国債の追加購入が、その主な手段です。
あるいは、日銀がすでに発行/供給した現金や当座預金の残高を維持するためには、償還される国債の分、新たな国債を買い入れて、保有国債残高を維持することが、その主な手段です。
したがい、日銀は、家計や銀行が必要とする流動性に相当する分の国債保有を続けるとみられます。
景気後退がなければ、量的引き締めは「2~5年」続いてもおかしくない
[図表9]に示すとおり、日銀がいますぐ国債購入を止め、今後の名目経済成長率を年率2.5%と仮定すると、日銀が供給する流動性や日銀が保有する国債の残高は、いまから2年で現状のGDP比の7割程度、5年で日銀の大規模金融緩和(QQE)開始前のGDP比に近づきます。
日銀が今後、どの程度のスピードで国債購入を減らしていくかにも依存しますが、景気後退がなければ、日銀の量的引き締め(QT)は、いまから2年~5年程度の期間、つづいても不思議ではありません。
日銀にとってみれば、やっかいなのは利上げ(=当座預金への付利増加)に伴う、資金収支の逆ザヤや債務超過です。
たしかに現在、FRBの逆ザヤや債務超過についてそれを批判する人は少数ですが、それは日銀に対する批判が生じない理由にはなりません。
日銀は逆ザヤを抑制するため、できるかぎり早く、総資産を減らすか、さもなければ利上げ幅を限定することになるでしょう。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
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![[図表9]日銀が供給する流動性(GDP比)および日銀の国債保有残高(GDP比)](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/0/2/540/img_02b0b3413ef37fef5f4e96f32a7589ae298234.jpg)