不動産鑑定評価:継続賃料
不動産の継続賃料(既存契約がある賃料を見直す場合など)を求める手法は、差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法を適用する(図表6)。
継続賃料は新規賃料と異なり、すでに存在する賃貸人と賃借人との関係を前提とした賃料の算定が不可欠である。したがって、「直近合意時点」から「価格時点」までの変動を分析することになる。
差額配分法は、言葉のとおりであるが、既存の賃料と価格時点における新規賃料を算出し当該差額を既存賃料に加減して算出する手法である。
たとえば、以下のとおり直近合意時点において100万円の賃料で更新しているが、現状で新規に賃貸に出せば200万円で貸せるとする。差額は100万円であり、当該差額を(仮に)2分の1して、試算賃料を算出するものである(100万円+100万円÷2=150万円)。
価格時点 :200万円 ←新規賃料
利回り法は、「基礎価格×継続賃料利回り+必要諸経費」の式で求めるものであり、新規賃料における積算法に準じて算出する。
具体的にみると図表8のとおり。現行賃料を定めた際の継続賃料利回りを求め、変動要素である基礎価格に当該利回りを乗じ必要諸経費を加算して試算賃料を求める。
本件では地代を前提とした事例であるが、基礎価格1億5,000万円×2.8%+25万円(必要諸経費/固都税)=445万円というように求める。
スライド法は、「現行の純賃料×変動率+必要諸経費」で求められる。採用する対象不動産の地域や用途によって異なるが、客観的に分析可能な事項によって求める。当該分析によって算出した変動率を現行賃料に乗じて試算賃料を求める。
賃貸事例比較法は、新規賃料同様に類似する事例を収集して補正のうえ求めていくが、特に地代の場合においては一般的に契約内容(賃貸事例)が開示されているものではなく、当事者間のみの秘匿性が高いものとなっていることから手法の適用が困難とあるケースが多い。
最近では、底地の所有を目的としたリートも出てきたことか、今後情報の開示も増えていくかもしれない。
継続賃料の求め方を整理すると図表10のとおりである。前述のとおり、継続賃料は既存契約の影響を大きく受けるため、さまざまな観点からアプローチし、鑑定評価を行っていく。
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