(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人が憧れる、高級タワーマンション。しかし、そこでの快適な生活は、管理者の地道な努力に支えられていることは、あまり知られていない。本記事では、あるタワマン管理組合理事長の活動から、タワマン生活の実情に迫る。

タワマンの各ポストを侵食し続ける、不要なチラシの数々

「ああ、もう、いまいましい!」

 

ポストへ次々と投げ込まれる、不要なチラシ。マンションの壁一面に並ぶポストにくまなく、そして乱雑に刺さるチラシは、常に住民たちを苛立たせる。ましてや、総戸数1,000を超えるタワーマンション(以下、タワマン)になると絶望的だ。各ポスト数枚ずつの不要なチラシを集めると、清掃員もたじろぐ「膨大なゴミ」へと姿を変える。

 

「チラシに紛れて重要な郵便物を見失いかけたこともありますし、雨の季節になると、ビショ濡れのチラシのせいで大事な郵便物が汚損したり、破れたりすることもあります。出張で数日家を空けただけで、嫌がらせのように、大量のチラシがねじ込まれ、ポストが壊れかけたこともあるのです。本当に苛立たしい思いです」

 

あるタワマンの住人は、不快感を隠さない。無謀なポスティング業者による迷惑行為は、日々あちこちで発生しているのだ。

重要書類がチラシに埋もれて行方不明に!?

単身でタワマンに暮らすCさんはIT技術者。このところの激務に疲れ果て、帰宅するや否や、ベッドに倒れこんで爆睡していたが、友人との久しぶりの約束のため、重い体を引きずるようにベッドから這い出した。ここ数カ月、取引先のシステムトラブルが続いて帰宅できた日は数えるほど。今回も2週間ぶりの帰宅だった。

 

「シャワーでも浴びるか…」

 

服を脱ぎ散らかしてバスルームに入ったCさんは、むんずとシャワーヘッドを掴むと温水の出るレバーをひねった。

 

「…あれ?」

 

なぜか、シャワーからは湯はおろか水も出てこない。「断水か?」といぶかしく思い、管理室に問い合わせるべく固定電話の受話器を取ると、発信音が聞こえない。

 

ほかのエリアの様子を見るため、玄関ドアから首だけ出してそっと周囲を伺うと、共用廊下の照明も、エレベーターも正常に稼働しているようだ。

 

「ウチだけ、なぜ…?」

 

Cさん宅のライフライン停止は、料金の滞納が原因だった。実はCさんは、近年では希少な「現金払い主義の人」であり、これまでも、かたくなに振込用紙払いを選択していたのである。

 

ライフライン料金の振込用紙は、毎月中旬前後に郵送されてくるが、出張続きで帰宅した日が少なかったCさん宅のポスト内は、宅配ピザ・水道修理・不用品回収・不動産・フィットネスジムなどのチラシ広告が重なり合い、振込用紙をはじめとする重要な郵便物は、その合間に飲み込まれてしまっていた。

 

このところの想像を絶する多忙さと、過酷な顧客対応で疲労困憊状態のCさんは、困ったことにライフラインの支払いを忘却していた。本当なら、封筒を見て思い出すところだが、重要書類はあたかも地層に隠れる小さな化石のように、折り重なったチラシの間に、ひっそりと姿を隠していたのである。

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