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「相続に備えて、財産を子供に贈与していたのだから、相続税が課税されることはない」と安心……それが、そうはいかない場合があります。相続開始前3年以内に贈与された財産については、相続財産に加算して相続税が課税されることになっています。さらに、令和6年以降に贈与された財産については、その期間が段階的に7年にまで延長されます。一般に「生前贈与加算」といわれる制度について、詳しくみていきましょう。

贈与税と相続税で「二重課税」にならないのか?

上記の事例では生前には贈与税を支払っていませんが、生前に贈与税を支払っている場合には、その贈与税と相続税で二重に課税されることにはならないのだろうか? と思われる方もいるでしょう。

 

二重課税を回避するために、「加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除される」ことになっています(上記※2に対応)。

 

では、先程の事例で、父Aが子Bに毎年300万円ずつ贈与していたと考えてみましょう。

 

■平成30年6月15日

300万円(贈与を受けた額)-110万円(基礎控除額)=190万円

190万円×10%=19万円(この19万円を贈与税として納税)

 

■令和元年6月15日

300万円-110万円=190万円

190万円×10%=19万円(贈与税として納税)

 

令和2年6月15日

300万円-110万円=190万円

190万円×10%=19万円(贈与税として納税)

 

令和3年6月15日

300万円―110万円=190万円

190万円×10%=19万円(贈与税として納税)

 

■令和4年6月15日

300万円―110万円=190万円

190万円×10%=19万円(贈与税として納税)

 

■令和5年4月5日

父Aが死亡し、その時点での父Aの財産は3,500万円。この3,500万円を子Bがすべて相続したとします。この相続財産3,500万円に、父Aが死亡した日からさかのぼって3年以内(令和2年4月5日から令和5年4月5日までの間)に、被相続人である父Aから子Bに贈与された財産900万円(300万円×3年分)を加算して相続税を計算することになります(上記※1に対応)。この4,400万円から基礎控除額を差し引いたものが課税遺産総額になります。

 

基礎控除額は、上記と同様に

 

3,000万円+600万円×法定相続人1人=3,600万円

相続財産4,400万円―基礎控除額3,600万円=800万円(課税遺産総額)

 

この場合の相続税の税率は10%なので、

 

800万円×10%=80万円

 

この場合、80万円の相続税の納付が必要に思われますが、これでは、贈与額900万円について、二重に課税されていることになってしまいます。ですので、この場合は、令和2年から令和4年分として納付した贈与税57万円(19万円×3年分)について、上記の80万円から控除されることになります(上記※2に対応)。

 

80万円―57万円=23万円

 

この23万円が、子Bの納めるべき相続税ということになります。このように、相続税と贈与税で二重に課税されるということはありません。

次ページ生前贈与加算の対象期間が7年に延長

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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