今週の注目点=介入vs投機円売りの攻防
160円までの米ドル/円上昇をリードしたのは、日米金利差の「米ドル優位・円劣位」を受け、米ドル買い・円売りが圧倒的に有利な状況のなか、過去最大規模にまで拡大した投機筋の米ドル買い・円売りでした。ということは、円安が終わるためには、この投機筋の米ドル買い・円売りが一巡し、撤退に向かうことが必要と考えられます。
ところで、代表的な投機筋であるヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円売り越し(米ドル買い越し)が、2024年に入ってから2週連続で縮小、つまり、米ドル買い・円売りポジションの比較的大きな縮小に動いたケースが1度ありました。3月前半に、米ドル/円が150円から146円台まで反落した局面です(図表2参照)。
この3月前半は、米ドル/円が当時147円台後半で推移していた120日MA(移動平均線)を一時的に割り込んだ局面でした(図表3参照)。つまり、120日MAを米ドルが割り込むなかで、投機筋の米ドル買いポジションが継続して縮小したということです。120日MAは、ヘッジファンドの売買転換点の目安との見方がありますが、この3月前半の動きは、そういった見方を裏付けるものとも考えられそうです。
以上を踏まえると、円安をリードした投機筋の米ドル買い・円売りは、米ドル/円が120日MA以上で推移しているなかでは続く可能性があり、撤退が本格化するためには、少なくとも120日MAを継続的に割れる見通しが必要ではないでしょうか。ちなみに、そんな120日MAは、足下で148.7円程度です。
今週は、それほど注目度の高い米経済指標発表やイベントの予定はありません。ですので、先週の流れを引き継ぎ、「日本の円安阻止介入」と「投機筋の米ドル買い」の攻防が最大の焦点になるのではないでしょうか。
CFTC統計の投機筋の円ポジションは、引き続き大幅な米ドル買い・円売りに傾斜しているとみられることから、介入警戒でそのポジションの損益確定が広がるようであれば、米ドル/円の上値は重くなりそうです。仮に、米ドル買いが再燃した場合、155円前後で、3回目の米ドル売り介入の出動の可能性があるため、これまでのプライス・パターンを参考にすると、5円前後の米ドル反落の可能性も出てくるでしょう。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は150~156円のレンジで予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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