“3度目の介入”はあるか?…為替のプロが注目する「円安阻止介入」と「投機筋の米ドル買い」の攻防の行方

5月8日~5月14日の「FX投資戦略」ポイント

“3度目の介入”はあるか?…為替のプロが注目する「円安阻止介入」と「投機筋の米ドル買い」の攻防の行方
(※画像はイメージです/PIXTA)

先週は、160円まで上昇したところから151円台まで急反落する大荒れの展開となった「米ドル/円」。今週も引き続き「円安阻止介入と投機筋の米ドル買いの攻防が最大の焦点となる」と、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は予想します。今週の相場の展開予測を詳しくみていきましょう。

5月8日~5月14日の「FX投資戦略」ポイント

〈ポイント〉
・先週の米ドル/円は、ついに160円まで上昇したものの、その後日本の円安阻止介入があったと見られ、一時は151円台まで急反落する大荒れの展開となった。
・今週も介入との攻防が最大の焦点となりそう。介入への警戒により、米ドルは上値が重い小動きとなるか、第3回目の介入により米ドル急落となるか。予想レンジは150~156円中心を想定。

先週の振り返り=介入などをきっかけに160円→151円へ

先週の米ドル/円は、前週末の日銀会合後、円一段安となった流れを引き継ぎ、週明け早々に160円台まで上昇しました。ただその後間もなく、日本の通貨当局による円安阻止の介入があったとみられ、米ドル/円は大きく下落に転じました。さらに、日本時間の木曜早朝にも2度目の介入があったとみられたこと、そして金曜日に発表された米4月雇用統計が予想より弱い結果だったことから、一時は151円台まで続落となりました(図表1参照)。

 

出所
[図表1]米ドル/円の日足チャート(2024年2月~) 出所:マネックストレーダーFX

 

上記のように、先週の米ドル/円は最大値幅が8円以上に拡大する大荒れの展開となりました。そのなかでまずは、円安阻止の為替介入について確認していきます。為替介入は、月曜日の昼過ぎに159円台から第1回目が、そして水曜日のFOMC(米連邦公開市場委員会)終了後(日本時間では木曜日早朝)に第2回目が実施されたとの見方が有力です。これについて、通貨当局は「ノーコメント」としていますが、プライス・パターンなどから介入が実施されていた可能性は高いでしょう。

 

これまでの日本の円安阻止介入は、2022年9~10月にかけて、3回実施されました。この3回の介入が行われた日の米ドル/円は、その日のうちに最大5円前後急落するなど、共通した特有のプライス・パターンがありました。今回も、介入が実施されたとみられた月曜日、水曜日の米ドル/円は、ともに最大5円程度の大幅下落となりました。こういったプライス・パターンをみると、介入が実施された可能性が濃厚です。

 

また、大規模介入の場合、日銀の資金需給見込みと大きな差額が生じることから、それを元に介入額を推計する方法が有効になっています。それによると、今回の1回目の介入は5.5兆円、2回目は3.5兆円程度との見方になるようです。

 

ここまで見ていくと、前回2022年の円安阻止介入パターンと基本的には同様の展開といえそうですが、今回、異例と感じさせる点があります。それは、米ドル売り介入が2回目にして、すでに前回より「米ドル安・円高」水準で実施されたとみられる点です。

 

例えば、2022年の場合は、1回目の介入が145円台から、そして2回目の介入は151円台から実施されたとみられています。これは1回目の介入でも米ドル高・円安が止まらなかったので、2回目の介入を実施したということで、まさに典型的な円安阻止介入といえます。

 

これに対して今回は、1回目の介入が159円台から実施され、2回目は157円台と、前の介入水準に達する前に、さらなる介入に動いたとみられています。これは円安阻止というより、実質的には「円高誘導」の介入ということでしょう。

 

このような介入手法は、基本的には介入の最終局面で行われます。例えば、2022年の場合も、2回目の介入が151円台から、そして3回目にして最後となった介入は、149円台から実施されたとみられています。

 

ちなみに、その前の介入局面は2011年の円高阻止で、ここでも結果的に10月31日に、米ドル=75円での米ドル買い介入で円高は終わったのですが、11月に入り、77~78円まで米ドルが反発するなかでも、米ドル買い介入は続きました。

 

このような介入手法には、「二番天井」「二番底」を作るといった戦略的狙いがあるのではないでしょうか。相場の転換は、今回のような米ドル/円の上昇局面では「二番天井」が目安になるのが一般的です。米ドルが下落に転じ、改めて上昇再燃となった場合でも、これまでの高値更新に至らないことで、すでに米ドルは天井を打った。つまり、米ドル高・円安の終了との見方が広がります。この「二番天井」を介入で演出するためには、前の介入水準まで米ドルが上昇する前に、米ドル売り介入に出動することになります。

 

すでに述べたように、このような介入手法は、これまでなら最終局面、つまり円安でも円高でも、その終了の「ダメ押し」としてとられるのが基本でした。それを、今回は2回目の介入で早速実施してきたというのは、「円安は160円で終わらせる」という、通貨当局の強い覚悟を感じさせるものと考えられます。

 

それでは、円安は160円で終わったのでしょうか?

 

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