(※画像はイメージです/PIXTA)

親から楽して不動産を受け継ぎ、大して働かなくても悠々自適な生活ができるーーそんなイメージを持たれがちな地主。しかし、その実態は大きく異なっており……。本記事では、一念発起して不動産を手放すことにした北沢家(仮名)の事例とともに、不動産売買の注意点について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

不動産を売却して現金化することに…

北沢隆一は事前に手元資金を厚くしておくことに決めた。後継者には自分の相続発生時において納税資金の確保などで慌てて欲しくないと考えたためだ。まとまったお金を資金化できるものとしては北沢家には不動産しかない。

 

実は先週、自宅のポストに不動産会社のチラシが投函されており「高価買取」を謳うものであった。地元では聞いたことがない不動産業者ではあったが、納税資金の確保を検討していたタイミングでもあったため、連絡を取ることにした。

 

数日後に不動産業者の担当である小早川(仮名)がアポイントを取得のうえ訪ねてきた。会社では自社買取業務を中心に売買仲介業務も一部担っているという。売却を検討している不動産の情報をいくつか開示して打合せを行った。1時間程度打合せを行い、その後、小早川と一緒に売却を検討している物件を見て回った。

 

小早川曰く、買取可能な物件がいくつかありそうであるとのことであり、会社に戻って査定および社長の決裁を仰ぐため少し時間が欲しいとのことであった。自宅に戻り査定の依頼書にサインをしてその日は解散した。

いざ、売却

1週間後に小早川から連絡があり面談をすることにした。駅前にある不動産について3億円で購入したい、とのことであった。理由としては、

 

・ローン完済している物件であり、かつ抵当権も設定されていないため、手残りが最も多くなる可能性が高いこと

・建物の築年が古いため、売買仲介であれば購入者がローンを使えず、購入希望者が限られ低い価格となる可能性が高いこと

・建物が老朽化しており、今後修繕などに高額な費用を要すること

 

などを挙げていた。

 

たしかに、ここ数年は維持管理に費用を要している物件である。駅前の好立地でありテナントは長いことついているが、今後のことを考えると売却することも検討していた物件である。3億円というのは感覚的に若干安いように思ったが、不動産売買契約書に融資特約もなく現金で購入するとのことであったので、葛藤はあったものの売却すると意思決定を行った。

 

ちょっと怪しい小早川

売却の意思決定をしてからは、1ヵ月程度の短期間であっという間に決済がなされた。決済日当日においては小早川が勤める会社を買主として、かつ手元資金で決済するとのことであったため、すぐに口座へ入金され完了するかと思ったが、小早川は電話をしたりほかのブースを行ったり来たりしていたため10時から開始したが結局終了したのは12時を少し過ぎたころであった。

 

売買価格3億円に敷金や賃料精算分、固定資産税などの日割り調整分を加減した額が北沢隆一の個人口座へ振り込まれるのを確認して、領収書を手交のうえ決済が完了した。

 

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