(※画像はイメージです/PIXTA)

本記事は、西村あさひが発行する『N&Aニューズレター(2024/4/1号)』を転載したものです。※本ニューズレターは法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法または現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆担当者の個人的見解であり、西村あさひまたは当事務所のクライアントの見解ではありません。

I はじめに―世界の動向―

近年、世界ではスポーツベッティングの合法化が進んでおり、直近では、ブラジルにおいて2023年12月に2023年法14790号(Law No.14,790/2023)が成立し、スポーツベッティングが合法化されるに至っています。日本以外のG7各国ではスポーツベッティングが合法化されています。

 

イギリスは歴史が古く1960年代に合法化されており、イタリアでは2006年、フランスでは2010年、ドイツでは2012年、カナダでは2021年にそれぞれ合法化されています。

 

米国では、2018年5月14日、米国連邦最高裁判所がスポーツ賭博を禁じる連邦法(The Professional and Amateur Sports Protection Act of 1992。以下「PASPA」といいます。)を違憲無効とする判決が確定し※1、スポーツベッティングの合法化の判断が各州に委ねられることとなりました。

 

※1 Murphy v. Natʼ l Collegiate Athletic Assʼn, 138 S. Ct. 1461 (2018).

 

当該判決確定後、ニュージャージー州を皮切りに各州における合法化が進み、本稿執筆時点では、全米50州のうち、38州とワシントンDCにおいてスポーツベッティングが合法化されており、違法とされているのは12州となっています。

 

諸外国のスポーツベッティング市場は急速に拡大しており、2023年から2030年にかけて年平均成長率約10%で拡大し、2030年には約1,820億米ドル(約24兆円)にものぼるとの試算も存在します2

 

※2 Grand View Researchのウェブサイト(https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/sports-betting-market-report?utm_source=prnewswire&utm_medium=referral&utm_campaign=ICT_13-Feb-23&utm_term=sports_betting_market_report&utm_content=rd)(最終閲覧日2024年4月1日)。

 

インターネットやテクノロジーの発展に伴い、オンラインのサービスが主流となっており、世界のスポーツベッティング合法市場における過半数以上の割合がオンラインスポーツベッティングによる売上となっています。オンラインスポーツベッティングの普及に伴い、日本のスポーツも海外から賭けの対象とされており、賭け金総額は年間5兆円程度となっていると言われています3

 

※3 一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会(2022年4月)「スポーツDXファクトブック」15頁(https://council-sep.org/resource/pdf/documents/share/bc080a09ec684cff1b2c61da6c4d3076.pdf)(最終閲覧日2024年4月1日)。

 

日本居住者が海外のオンラインスポーツベッティングサイトで賭けをすることは、刑法上の賭博罪(刑法185条)に該当し処罰の対象となりますし※4、また、日本居住者に対してサービスを提供するオンラインスポーツベッティング事業者には、刑法上の賭博場開帳図利罪(刑法186条2項)が成立する可能性があります※5

 

※4 平尾覚=稲垣弘則=北住敏樹「スポーツベッティング事業の米国の最新動向と日本におけるサービス展開の法的留意点」(西村あさひ法律事務所 スポーツビジネス・ロー・ニューズレター2020年7月15日号)。

 

※5 平尾覚=稲垣弘則=北住敏樹「日本のスポーツ団体・事業会社が海外のスポーツベッティング事業に関与する場合の犯罪の成否」(西村あさひ法律事務所 スポーツビジネス・ロー・ニューズレター2020年9月4日号)。

 

そのため、例えば、米国で適法に事業を営んでいる最大手のスポーツベッティング事業者であるFanDuel社、DraftKings社等は、日本から自社のベッティングサイトへのアクセスを不可能とする対策等を講じています。しかしながら、昨今、日本居住者でもオンラインで賭けを行えるようなサービスを提供する違法なスポーツベッティング事業者が増加しており、日本の違法市場は急速に拡大していると言われています。

 

一方で、我が国においては、「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」に基づくスポーツくじの合法的な市場が存在し、現在の市場規模はtoto、WINNER等による予想系の市場が年間約114億円、BIG等による非予想系の市場が年間約1,090億円となっています※6

 

※6 独立行政法人日本スポーツ振興センターが公表した2023年度のスポーツくじの売上の数値となります(https://www.jpnsport.go.jp/sinko/Portals/0/sinko/sinko/pdf/happyou20240329_1.pdf)。

 

近隣諸国、例えば韓国や台湾では、日本よりもスポーツくじ市場が大きく拡大しており、韓国では2023年時点で約61,367億ウォン(6,902億円)※7、台湾では2023年時点で約592億台湾ドル※8(約2,817億円)程度の市場が存在しています。韓国と台湾では、日本のスポーツくじと同様に、売上の一部がスポーツ振興財源に還元されています。

 

※7 国民体育振興公団(KSPO)に対するヒアリング結果。

 

※8 台湾教育部体育署のウェブサイト(https://www.sa.gov.tw/Resource/1/1/1/7457/%E5%A8%81%E5%89%9B_%E7%9B%88%E9%A4%98%E5%88%86%E9%85%8D%E8%A1%A8112.12.pdf)(最終閲覧日2024年4月1日)。

 

近年、我が国では、スポーツ推進のための財源としてスポーツくじ助成を活用することも検討されており、スポーツくじの合法的な市場を拡大する機運が出てきていますが※9、諸外国のスポーツくじ・スポーツベッティング関連法制度の動向を把握することは、日本の文化に即した法制度を検討するに当たっても有益であると考えられます。

 

※9 例えば、スポーツ庁と経済産業省が主催する第二期スポーツ未来開拓会議が2023年7月に公表した中間報告35頁では「スポーツ振興くじは、貴重なスポーツ振興財源確保の手段であるとともに、スポーツへの人々の関心を高めるものでもある。スポーツファンに訴求する魅力的な商品開発等、更なるスポーツ振興くじの充実に向けた取組などを進め、スポーツ振興財源を拡大し、その財源がスポーツ団体や地域における多様なスポーツ活動への支援に活用される好循環の拡大を積極的に図るとともに、スポーツの魅力向上につなげる。」と言及されています(https://www.mext.go.jp/sports/content/20230705-spt_sposeisy-000027339_2-1.pdf)。また、一般財団法人日本スポーツ政策推進機構が2024年1月に公表した「日本スポーツ会議2024提言 新たなスポーツへの挑戦に向けて」2頁では、「提言2. スポーツ推進のための財源の確保と拡充」の項目において、「スポーツ振興投票制度の改正を通じた収益の拡大に伴うスポーツ団体等への助成財源の確保も図られるべきであろう。」と提言されています(https://nsk.nspc.or.jp/wp-content/uploads/2024/01/03f02c897a59300b081af0f1233332ae.pdf)。

 

また、スポーツくじ市場が拡大に向かう場合には、八百長等の危険を防止する観点からのインテグリティ対策や、ギャンブル依存症に対する対策が重要となってくると考えられます。

 

そこで、当事務所のスポーツビジネス・ロー・ニューズレターでは、連載シリーズとして、諸外国のスポーツくじ・スポーツベッティングの法規制動向を整理するとともに、各国政府やスポーツ団体が実施するインテグリティ対策や依存症対策の制度についても紹介していきます。

 

本稿では、第一弾として、米国の法規制動向について複数回に分けてご紹介します。なお、昨今、ロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手の通訳が違法賭博に関与したとの疑いで解雇された報道が世間の大きな注目を集めていますが、本稿が米国のスポーツベッティングの法規制動向に関する正しい理解の一助となれば幸いです。

Ⅱ 米国各州で合法化が進むに至った経緯・効果

日本では、刑法185条で賭博行為には賭博罪が成立するため、スポーツを対象とした賭けは原則として禁止ですが、競馬、競輪、競艇、オートレース等の公営競技については、競馬法等の特別法が制定されているため、刑法35条(犯罪行為を正当化する理由があるとして法律が制定された場合には、犯罪行為を正当行為として違法性を阻却し、犯罪は成立しないとする規定)に基づいて適法となっています。

 

一方で、米国では、日本とは異なり、賭博を合法とするか否か、いかなる内容の賭博を合法とするかは、各州の判断に委ねられています。例えば、ユタ州やハワイ州ではいかなる賭博も違法とされていますが、これ以外のほとんどの州では、カジノ(施設で行われるもの)や競馬は一定条件下で合法とされています。また、オンラインカジノが合法とされているのは、本稿執筆時点で7州に留まっています。

 

この点に関し、スポーツベッティングについては、いわゆるブラックソックス事件に代表されるようなプロスポーツ界や大学スポーツ界における八百長問題の多発や、収益の犯罪組織への流入への懸念から、古くから違法とされていました。そんな中、1992年に連邦法(PASPA)が制定され、既に州法でカジノ等におけるスポーツベッティングが適法に運営されていたネバダ州を除き、全州でスポーツベッティングが違法であることが明確にされました。

 

しかしながら、2018年5月14日に、米国連邦最高裁判所がスポーツベッティングを違法とする連邦法(PASPA)が米国合衆国憲法修正第10条に反し違憲10であるとする判決を下したことで、スポーツベッティングを合法とするか、合法とする場合にどのような条件を付すかは、他の賭博と同様に各州の判断に委ねられることとなりました。

 

※10 米国合衆国憲法修正第10条は「この憲法が合衆国に委任していない権限または州に対して禁止していない権限は、各々の州または国民に留保される。」と規定しており、連邦政府に留保される権限として限定列挙されていない権限については、州に属するとされています。どのような賭博を合法とするかは州の権限に属するため、連邦政府がPASPAにより各州がスポーツ賭博を合法化することを阻害することは、米国合衆国憲法修正第10条に違反すると判断されたということです。

 

このような判決が出た背景には、NBAのコミッショナーのAdam Silver氏が、2014年11月13日にニューヨークタイムズ紙に寄稿した記事が影響しているといわれています。Adam Silver氏は、同紙において、米国では監視が行き届かない違法市場が蔓延しており毎年4,000億ドル近くが賭けられているという推計があるという国内動向と、米国以外では広くスポーツベッティングが規制市場化されているという世界の動向を踏まえ、インテグリティが守られることを大前提として、スポーツベッティングを適切な監視下において規制するべく合法化を求める内容の記事を寄稿しました11。これが米国内で大きな議論を呼ぶこととなりました12

 

※11 Legalize and Regulate Sports Betting By Adam Silver (The New York Times, Nov. 13, 2014)(https://www.nytimes.com/2014/11/14/opinion/nba-commissioner-adam-silver-legalize-sports-betting.html)(最終閲覧日2024年4月1日)

 

※12 The impact of Adam Silver's sports betting op-ed five years later (ESPN, Nov. 12, 2019)(https://www.espn.com/chalk/story/_/id/28068000/the-impact-adam-silver-sports-betting-op-ed-five-years-later)(最終閲覧日2024年4月1日)

 

当該判決後、各州においてスポーツベッティングの合法化が検討され、前記Ⅰのとおり、本稿執筆時点では38州とワシントンDCにおいて合法化されています13。そのうちスポーツベッティングを合法化した州では、スポーツベッティングにより得られた収益の一部を、教育、福祉、ギャンブル依存症対策などの各州が抱える社会課題解決のための財源として活用しています。

 

※13 このうち30州とワシントンDCではオンラインによるスポーツベッティングも合法とされています。

 

しかしながら、これらはあくまでも一般財源であり、特定財源として必ずスポーツ振興財源として活用されるわけではありません。この点が、収益の一部が必ずスポーツ振興財源に還元される日本のスポーツくじと異なる点です。

 

なお、スポーツベッティングを違法としている州が存在する理由・経緯は様々ですが、例えばカリフォルニア州については、これまで数回、スポーツベッティングを合法化する法案に関する住民投票が実施され、全て否決されています。同州では、直近でも2022年に実施された住民投票で80%を超える反対票を投じられたため、スポーツベッティングの合法化には至りませんでした。

 

また、米国では、試合前に勝敗等の結果を予想する「Pre-game」だけでなく、試合中に試合で生じる結果や現象を予想する「In-game」という種類のベッティングにも注目が集まっています。例えば、試合開始後に変動する状況に応じてどちらのチームが勝利するかを予想して賭けたり、NBAの試合であれば次の得点がどのように決まるかといった内容が「In-game」の対象となります14。「In-game」は試合を観ながら賭けることを実現するため、スポーツベッティングの合法化により、放映権の価値が高まるという効果が生じています15。一方で、一部の州では、放映権の高騰が要因となり地方放送局の破綻を招いている16という負の側面もみられています。

 

※14 How Does Live In-Game Betting Work? (Forbes, Feb. 6, 2024)(https://www.forbes.com/betting/guide/in-game/)(最終閲覧日2024年4月1日)

 

※15 TVʼs NFL Rights Gamble: Will the League Opt Out of Its New Deals? (Hollywood Reporter, Mar. 31, 2021)(https://www.hollywoodreporter.com/business/business-news/tvs-nfl-rights-gamble-will-the-league-opt-out-of-its-new-deals-4158535/)(最終閲覧日2024年4月1日)

 

※16 2023年3月には、米国でバリースポーツという地域放送ネットワークを運営するダイヤモンド・スポーツ社が、MLB球団のダイヤモンドバックスへの放映権料の未払などを生じさせ、破産申請を行った旨が報道されています(TIMELINE OF DIAMOND SPORTS GROUPʼS CHAPTER 11 BANKRUPTCY (Sportico, Feb. 28, 2024)(https://www.sportico.com/business/media/2024/diamond-sports-group-bankruptcy-timeline-1234715961/)(最終閲覧日2024年4月1日))。

 

米国では、スポーツベッティングの合法化後、ギャンブル依存症患者が増加傾向にあると言われており、米国のThe National Council on Problem Gambling (NCPG)は、米国各州でスポーツベッティングの合法化が開始された2018年から2021年にかけて、ギャンブル依存症に陥るリスクが30%増加したと見積もっています17

 

※17 NCPGのウェブサイト(https://www.ncpgambling.org/news/ncpg-statement-on-the-betting-on-our-future-act/)(最終閲覧日2024年4月1日)。

 

そのため、米国では、NCPGやスポーツベッティング事業者により、ギャンブル依存症への対応が進められています。2024年3月27日には、米国の大手スポーツベッティング事業者7社がResponsible Online Gaming Association(ROGA)を立ち上げ18、2,000万ドル(約30億円)の資金を投入し、ギャンブル依存症をはじめとするギャンブルに関する課題を解決するための研究や取り組みを進めることが発表されており19、今後、業界全体で、より一層依存症等の弊害に対する予防・対策が進められていくものと思われます。

 

※18 ROGAのメンバーは、BetMGM、bet365、DraftKings、Fanatics Betting and Gaming、FanDuel、Hard Rock Digital及びPENN Entertainmentの7社であり、7社の市場規模は、米国の合法なオンラインスポーツベッティング市場の85%を占めるとのことです。

 

※19 ROGAのウェブサイト(https://www.responsibleonlinegaming.org/press-center/largest-us-sportsbooks-join-forces-to-tackle-problem-gambling)(最終閲覧日2024年4月1日)。

 

加えて、スポーツベッティングの対象となる競技における八百長のリスクに対応するため、2018年のPASPAの違憲判決後、米国の各スポーツリーグは、八百長防止等に関するルールを定めるとともに、競技関係者へのインテグリティ教育の実施や、インテグリティサービス事業者と提携した上でテクノロジーを用いた不正な賭けの傾向の有無等の監視などの対策を講じ、不正な兆候が発見された場合は厳正な対処が行われています。

 

実際に、2024年3月25日には、NBAのトロント・ラプターズに所属する選手について、同選手のスリーポイントの成功本数等が賭けの対象になっていた試合における同選手のパフォーマンスに不自然な点がある一方で、当該賭けに大量の金額が賭けられていたことが検出され、八百長の疑義があるとして、NBAが同選手に対して調査を行う旨が報道されています20

 

※20 NBA eyes Raptors' Jontay Porter for betting issues(ESPN, Mar. 25, 2024)(https://www.espn.com/nba/story/_/id/398 08900/nba-eyes-raptors-jontay-porter-betting-issues)(最終閲覧日2024年4月1日)

 

なお、米国においては2018年のPASPAの違憲判決後も依然として違法市場が存在しますが、合法化された州では違法市場の縮小が進んでいます。例えば、同判決以後はじめて合法となったニュージャージー州においては、同州における賭け金総額の約80%が合法市場に流れており、違法市場が大幅に縮小していると言われています。

Ⅲ 米国における違法な賭博と合法なスポーツベッティングの分かれ目21

※21 本項目の記載に当たっては、米国のエンターテイメント法務において高い専門性を有するGamma Law(https://gammalaw.com/)の見解を根拠としています。

 

前記Ⅰのとおり、米国ではスポーツベッティングを合法とする州と違法とする州が存在しますが、合法州で行われるスポーツを対象とした賭け行為がすべて合法となるわけでもなく、違法州に居住する者が行う賭け行為がすべて違法となるものでもありません。

 

まず、米国においてある人物が行うスポーツを対象とした賭け行為が適法となるか否かは、「その人物が賭けを行った時点で、物理的にどの州にいたか」が基準となります。

 

ある人物が違法州においてスポーツを対象とする賭けを行った場合、その行為は当該州の刑法等に違反して当然に違法となります。賭けを行った者が普段合法州に居住していたとしても、「賭けを行った時点でいた場所」が違法州内であれば、その行為は違法となります。そもそも、違法州に存在するスポーツベッティング事業者はその時点で違法な存在であるため、そのような業者のサービスを利用した賭け行為は当然に違法となります。

 

これに対して、合法州において、当該州でライセンスを取得する等して適法に事業を営んでいるスポーツベッティング事業者のサービスを利用して賭けを行う場合、当該行為は合法となります。普段違法州に居住している人物であっても、合法州に赴いて賭けを行う場合は合法となります。この場合、賭けを行っている人物の支払口座等は違法州に存在することとなりますが、その人物が合法州に物理的に存在すれば賭け行為は合法となることとなります。

 

なお、合法州においても、スポーツベッティング事業を営む事業者は各州の委員会等からライセンスを得ている事業者に限定されているのが通例です。したがって、ライセンスを取得していない事業者は違法な事業者となります。そのため、合法州にいる場合であっても、このような違法なスポーツベッティング事業者のサ-ビスを利用して賭けを行う場合、やはり違法な行為となることには留意が必要です。

 

それでは、インターネットなどを利用して、州をまたいでスポーツを対象に賭けを行うことはどうなるのでしょうか。

 

①合法州にいる者が、違法州のスポーツベッティング事業者のサービスを利用してオンラインで賭けを行う場合

②違法州にいる者が、合法州のスポーツベッティング事業者のサービスを利用してオンラインで賭けを行う場合

③合法州にいる者が、別の合法州で適法に事業を営んでいるスポーツベッティング事業者のサービスを利用して賭けを行う場合

 

について、それぞれの合法性が議論となり得ます。

 

結論としては、①~③のいずれの場合も、利用者の賭け行為は違法となります。米国の連邦法(Wire Act, 18 U.S. Code § 1084)は、通信を利用して州境を越えて賭けを行うことやスポーツベッティングに関する情報を伝送することを違法としています22。そのため、違法州からインターネットなどを用いて合法州のスポーツベッティング事業者のサービスを利用して賭けを行うことも、同法に違反して違法ということとなります。

 

※22 https://www.law.cornell.edu/uscode/text/18/1084

 

また、例えば合法州であるニューヨーク州から、同じく合法州であるネバダ州のスポーツベッティング事業者のサービスを利用して賭けを行うことも違法となります23

 

※23 なお、DraftKings社やFanDuel社といった、各州でライセンスを取得し適法にオンラインスポーツベッティング事業を運営している事業者は、州外からのアクセスを遮断しているため(当然日本からのアクセスも遮断されています)、通常はこれらの事象は発生しません。最近ではVPNを使って州をまたいで賭けを行おうとしているユーザーも識別し、アクセスをブロックするテクノロジーも活用されているようです。

 

したがって、米国においても、スポーツを対象とした賭け行為が合法となるのは、合法州において、その合法州からライセンス等を取得して適法に事業を営んでいるスポーツベッティング事業者のサービスを利用して行われる賭け行為のみに限定されます。

 

繰り返しとなりますが、たとえ合法州内で行う賭け行為であっても、ライセンスを取得していない違法なスポーツベッティング事業者を利用した賭け行為は違法となります。また、通信を利用して異なる州をまたいで行われるスポーツを対象とした賭け行為はすべて違法となります。

 

スポーツビジネスに従事する事業者においては、自社・自チームの関係者が、米国への出張・遠征・旅行の際にスポーツベッティングに触れる機会が発生することが当然に予想されます。その際に、関係者が違法な賭博行為に関与しないよう、事前に上記の点への注意喚起を行うこと等によりトラブルを予防することが必要と考えられます。

Ⅳ 終わりに

本稿では、米国各州においてスポーツベッティングの合法化が進むに至った経緯や、スポーツベッティングの各州での合法化が米国スポーツ界に及ぼした影響をご紹介させていただくとともに、米国における違法な賭博と合法なスポーツベッティングの整理をご紹介させていただきました。

 

次回は、米国において進められている、八百長等の不正を防止するための対策(インテグリティ対策)等について、対策の現状と近時の世界の動向を踏まえた課題について解説させていただきます。

 

 

平尾 覚
西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー弁護士

 

稲垣 弘則
西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー弁護士

 

北住 敏樹
西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 弁護士

 

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