高齢父が相続対策で建築した1棟アパート、経営困難に
いま80代の父が、25年前に相続税対策として、自宅そばに賃貸アパートを1棟建築しました。信託銀行の提案で、購入代金のほとんどは銀行の借入金でまかなっており、現在も返済中です。これまでは満室でなんとか回っていましたが、昨年あたりから空室が増えて家賃収入が激減してしまい、不安でいてもたってもいられません。いまから家賃の減額、もしくは大がかりなリフォームを検討するべきでしょうか?
足立区 58歳 男性
まず、賃貸物件に空き部屋が出てきたということは、家賃を下げなければいけない状態にあるということです。それ以外にも、周辺物件の家賃相場が下がっていることも、原因として考えられます。
「空室が出ていて、家賃相場が下がっている」となれば、売却しても価格が安くなってしまうと思われるかもしれませんが、東京都内の中古マンションの価格は、いまだ上昇が続いています。東日本不動産流通機構によれば、売買平均単価とマンション賃料平均単価のいずれも上昇しているのです。
中古マンション価格は2017年から上昇していましたが、2020年の東京オリンピック後は下がるだろうといわれていました。ところがその後、価格が下がるどころか、さらなる上昇が続いています。
日銀のゼロ金利政策もあり、低金利で住宅ローンを借りられたことが、価格の上昇をもたらしたのではないかと推察されています。
賃貸物件の表面利回り「4%」で限界に
東日本不動産流通機構によれば、賃貸マンションを売却するとした場合、投資家からは4%ほどの表面利回りが要求されることが予想されます。
2017年から2020年6月までは、表面利回り5%から7%は要求されていました。その後、2023年に入ると、一気に低下して4%に留まっています。しかし、賃貸経営にかかわる経費を考えると、この表面利回りが限界で、これより下がったら赤字に転落してしまいます。
日銀がゼロ金利政策を解除したため、「金利上昇→銀行借入金を抱える賃貸経営は赤字」となってしまうのではないか、という懸念を抱く方もいることでしょう。
確かに、借入金を抱えていると、金利支払いと元本返済が発生します。赤字にならないとしても、元本返済を考えると、現金は出ていく一方になる可能性があるため、今後の賃貸経営は苦しくなることが予想されます。