保険=「人生のリスクヘッジ」のひとつ
「リスクマネジメント」について学ぶことは、生命保険や損害保険に関わる知識を深めるうえで非常に重要です。
「リスク」とは、未来の予測不可能な出来事によって生じる損失の可能性を指し、私たちの生活には多種多様なリスクが存在しています。そのため、予測不可能な事故やその他のリスクに備えることが、リスクマネジメントとなります。これは、人生の計画を立てるうえでも欠かせない要素です。
「保険」は「リスクヘッジ」のひとつの方法として機能します。リスクヘッジとは、リスクを避けたり軽減したりすることで、とくに大きなリスクに対しては個人で対処することが難しいため、保険という形で多くの人がリスクを共有するのです。
保険制度には「公的保険」と「私的保険」があります。公的保険は国によって運営される強制的な制度で、最低限の保障を提供します。これに対して、私的保険は民間の保険会社が提供するもので、公的保険だけではカバーできない部分を補うために利用されます。
民間の保険には「生命保険」と「損害保険」があります。生命保険は人の生死に関わるリスクをカバーし、損害保険は物や責任など広い範囲のリスクをカバーします。これらの保険は、将来に起こりうるさまざまなリスクに備え、経済的な安心を提供します。
保険契約者は「保険業法」によって守られている
保険の販売、すなわち保険の募集にはルールがあり、保険契約を締結するためには、保険募集人、保険代理店、保険仲立人など、特定の資格を持つ人による媒介や代理が必要です。これらの人々は、保険契約者と保険会社の間で重要な役割を果たし、適切な保険商品の選択をサポートします。
保険業法は、保険契約者の保護を目的とし、保険募集人による不当な勧誘や誤解を招く行為を禁止しています。例えば、契約者にとって重要な情報を正確に伝える義務があり、不実告知を勧めたり、告知を妨害したりする行為などは厳しく禁じられています。また、消費者契約法では、消費者が不適切な勧誘によって契約した場合、その契約を取消す権利が認められています。
生命保険の基本的な機能や、保険料の計算方法、剰余金の配当に関する知識は、保険に関わるすべての人にとって重要です。生命保険は、被保険者が亡くなった際や特定の条件を満たしたときに、経済的な支援を提供する役割を担っています。
契約者が保険料の支払いが困難になっても「解決策」がある
保険金の支払いは「死亡保険」「生存保険」「生死混合保険」の3つに分類されます。保険料の計算には、大数の法則と収支相等の原則が適用されます。これらの原則に従い、予定死亡率、予定利率、予定事業費率の3つの基礎率が使用されるのです。これらは、過去のデータに基づいて算出され、保険会社が安定した運営を行うために不可欠です。
「剰余金」は、保険会社が予定よりもよい結果を得た場合に発生する利益で、これを保険契約者に配当金として還元することがあります。
生命保険契約の手続きには、保険約款の理解、告知の義務、保険料の払い込みなど、いくつかの重要なステップがあります。これらのステップを適切に実行しなければいけません。
契約者が保険料の支払いが困難になった場合にも、解決策が用意されています。保険会社は、払込猶予期間や自動振替貸付制度などの制度を設けており、契約者が一時的な経済的困難に直面したときにも柔軟に対応できるようになっています。
生命保険商品・個人年金保険の種類と役割
生命保険商品には「定期保険」「終身保険」「養老保険」に分けられ、個人年金にもさまざまな商品が存在します。これらの商品は、ファイナンシャル・プランナーをはじめとする多くの専門家によって販売されえています。
定期保険は、特定の保険期間内に、被保険者が死亡または高度障害状態になった場合に保険金が支払われるものです。保険期間が満了すると、同じ条件で自動的に更新されることがあります。更新時には新たな保険料が年齢に応じて再計算され、保険金額が一定か、時間の経過とともに増減するタイプがあります。
終身保険は、保険期間を定めず、被保険者の一生を通じて保障が続く商品です。解約すると解約返戻金があり、保険料の支払い方法には一時払いや有期払い、終身払いなどがあります。
養老保険は、保険期間中に何らかの事象が発生した際に保険金が支払われ、期間満了時にも満期保険金が支払われるタイプの保険です。これにより、死亡保障だけでなく、貯蓄機能も兼ね備えています。
個人年金保険には「有期年金」「確定年金」「終身年金」といった種類があり、「定額年金」と「変額年金」の形式があります。とくに変額年金は運用実績によって年金額が変動するため、投資性を持ち合わせていますが、最低保証が設けられている点も長所となっています。
その他、知っておきたい保険の種類と役割
学資保険は、子どもの教育費用を目的とし、特定の時期に祝金が支払われる商品です。また、親が亡くなった場合には、子どもの養育費用として給付金が支払われるよう設計されています。
保険商品には特約を付加することで、生命保険の保障内容を拡張することが可能です。災害時の追加保障や、入院に関する特約など、さまざまなリスクに対応するための特約が用意されています。
団体保険は、企業や団体がその構成員のために加入する保険で、特定の条件下での保障や、融資と連携した保険商品もあります。とくに団体信用生命保険は、住宅ローンなどの返済と連動しており、ローン借入者の死亡時に残債務の清算を目的とします。
損害保険の種類と役割
損害保険は、偶発的な事故や災害から生じる損害を補償する保険で、「火災保険」「自賠責保険」「PL保険」などが含まれます。これらは物的損害、人的損害、賠償責任の損害をカバーするために設計されており、実損の原則に基づいて保険金が支払われます。
損害保険の保険金額は、保険価額に基づいて定められ、実際の損害と比較して支払われる額が決定されます。契約者の告知義務と通知義務は、保険契約を適正に機能させるために守るべき重要な義務です。
火災保険は、住宅や事業所の建物および家財に対する保険で、火災だけでなく、様々な災害からの損害もカバーします。地震保険は、火災保険と組み合わせて加入することで、地震による損害を補償します。
自賠責保険は、自動車事故による人身損害に対して、法律で加入が義務付けられている保険です。自動車保険には、自賠責保険の他にも任意の自動車保険があり、より広い範囲をカバーすることができます。
医療保険の種類と役割
医療保険には、「公的医療保険」と「民間医療保険」があります。民間医療保険は公的医療保険の補完的な役割を果たします。
第三分野の保険として、「医療保険」や「介護保障保険」「がん保険」「所得補償保険」などがあり、生命保険と損害保険の中間に位置する特殊な保険商品として位置付けられています。がん保険はがんに特化し、所得補償保険は収入減少リスクに特化した保険です。これらは、生命保険会社と損害保険会社の双方から提供されています。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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