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アジア:マーケット動向
⇒【株式】概ね上昇、【通貨】概ね下落、【債券】まちまち
【株式市場】
◆概ね上昇
台湾は人工知能(AI)関連市場の成長期待を背景に半導体関連企業や電子機器受託生産企業が上昇を牽引。韓国は堅調な半導体メモリ価格などを背景に大手電子機器・電気製品メーカーの株価が上昇。オーストラリアはオーストラリア準備銀行が政策金利を据え置いたものの、インフレを警戒するスタンスが緩んだことなどが好感され、ベトナムは資本市場改革が進展するとの期待感が高まった。香港は米中関係悪化懸念が高まったものの、中国景気の改善期待などから小幅に上昇。一方、マレーシアは金融や通信関連企業の株価が軟調だったほか、インドネシアは2月の貿易収支が縮小したことなどが嫌気され、消費者物価指数(CPI)が市場の事前予想を上回ったフィリピンも小幅に下落した。
【通貨(対米ドル)】
◆概ね下落
米ドルが3月上旬以降、上昇基調にあったため、多くのアジア通貨は米ドルに対して下落した。政治リスクが高まりつつあるタイバーツが最も下落した。マレーシアリンギなど資源関連通貨は米ドルに対して上昇したが小幅にとどまった。
【債券(国債)市場】
◆まちまち
国債利回りはオーストラリア等で低下、このうち、中国、タイ、インドでは23年11月以降緩やかな金利低下傾向が続いている。一方で、ベトナムは金利反転の動きとなっており、また台湾ではインフレ抑制重視により1年ぶりに利上げが実施され、金利上昇につながった。
<※参照:各国の株価指数の名称>
●中国:上海/深圳CSI300指数、●香港:ハンセン指数、●韓国:韓国総合株価指数、●台湾:台湾加権指数、●インドネシア:ジャカルタ総合指数、●マレーシア:クアラルンプール総合指数、●タイ:SET指数、●ベトナム:ベトナムVN指数、●シンガポール:シンガポールST指数、●フィリピン:フィリピン総合指数、●インド:SENSEX指数、●オーストラリア:ASX200指数
中国<金融市場動向>
⇒株式はもみあい、元安リスクに留意、金利はもみ合いながら低下
【株式市場】
◆中国景気の改善期待が高まる
2月の中国CPIの前年比伸び率が市場予想を上回り中国景気の改善期待が高まったほか、中国政府が金融機関に対し不動産企業への支援強化を要請したと伝わったことなどが市場の下支え要因となった。一方、中国人民元安への圧力が強まったことや米中関係悪化懸念から上値は重く、小幅な上昇となった。投資戦略においては、引き続き構造的な成長分野の有力企業、政策のサポートを得ている企業、国際競争力のある企業、増配が期待される企業に着目し、ツーリズムや高齢化関連、環境関連や工場自動化などを長期目線では有望視できそうだ。
【為替・債券(国債)市場】
◆元安リスクに留意
米国の利下げ観測が続いている状況下では人民元の対米ドルレートに上昇余地はある。ただし、米国景気が引き続き堅調な内容であったことから短期的には米ドル上昇リスクがあることに加え、国内では需給ギャップ拡大に伴う低インフレで金融緩和の進展が期待される。更に、米中対立に伴う海外からの銀行融資の引き揚げリスクなどを考慮すれば、目先の元安リスクに留意したい。また、日本で利上げがあるとしても大幅な円高への転換は想定しにくく、円に対する下落リスクは限定的だろう。
◆債券利回りはもみ合いながら低下する展開
中国では、月初に全国人民代表大会(全人代)が開催され、2024年の成長率目標や財政計画が発表され、概ね市場予想並みとなったものの、市場の一部にあった財政拡大期待が剥落したことで金利は低下。その後は、利益確定の動きから低下幅を縮小する動きもあったが、人民銀行の金融緩和姿勢の継続が意識される中、金利は低下して推移。目先は、先行きの中国経済の回復の鈍さが意識されつつ、追加金融緩和への期待が高まる展開は継続すると見込み、中国国債利回りはもみ合いながら低下する展開を予想する。
中国<マクロ経済動向>
⇒需要不足が継続
◆3月製造業PMIは主に季節性で上昇
3月の製造業PMIは市場予想を上回り、50.8へ上昇した。中国では1月または2月に春節休暇があり、3月上旬に全人代が開催されることから、季節性として3月の製造業PMIは上昇しやすい点に留意が必要である。6割超の製造業者が需要不足に直面しており、「製品価格」の項目は引き続き50割れであることから、製造業での低インフレ圧力が続いていることがわかる。また、製造業PMIの構成要素である「雇用」は3月としては過去遡及できる2005年以降、過去2番目に低い水準にとどまっており、雇用環境が改善していないことを示唆している。
◆住宅価格の下落基調が続く
国家統計局が取りまとめている70都市の新築・中古住宅価格をみると、2月も新築・中古双方ともに引き続き下落した。住宅価格の下落基調が長期化することによって、家計部門の資産価値が目減りし、需要不足をもたらす構図が今後も続きそうだ。
◆需給ギャップの拡大続く
1-2月の小売売上高は市場予想を下回ったが、鉱工業生産は上回った。国家統計局が公表している季節調整値を利用し、3カ月前比を計算すると、23年10-12月期以降、小売売上高のモメンタムは下向きに対し、鉱工業生産は上向きになっており、対照的な動きとなっている。小売売上高を需要の代表的な経済指標、鉱工業生産を供給の代表的な経済指標と解釈すれば、需要不足の状況で供給を増加させていることになる。この点は財市場で需給ギャップの拡大を通じて、生産者物価指数に下振れ圧力となっているとみる。このことが中国の金融政策が緩和に向かうことを支持するだろう。
(2024年4月5日)
石井 康之
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフリサーチストラテジスト
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『香港株式市場、中国景気の改善期待などから「小幅上昇」 ~アジア・マーケット動向を振り返る【解説:三井住友DSアセットマネジメント】』を参照)。