(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

 

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【“プロ”に聞く!ベトナム経済】

~年後半に成長率が加速する季節性に注目~

国家主席辞任も政治不安には至らない見込み。

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24年1-3月期の成長率は市場予想を下回ったが…

ベトナムの2024年1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.7%と、市場予想の同+6.4%を下回り、2023年10-12月期の同+6.7%から鈍化しました。

 

[図表1]ベトナムの実質GDP成長率

 

ただし、ベトナムの実質GDP成長率は年前半から年後半にかけて加速しやすいという季節性があります。コロナ禍による行動制限があった2020年から2022年を除くと、このような季節性が確認できます。2024年もよほど特殊な事態が発生しない限り、年後半に成長率が加速するという季節性が機能すると想定した方が良さそうです。

 

[図表2]ベトナム実質GDP成長率の季節性

 

ベトナム政府が設定した2024年の実質GDP成長率目標+6.0~6.5%と比較すると、1-3月期の成長率は低いような印象を受けますが、懸案だった不動産業が2四半期連続でプラス成長になったことも併せて考慮すれば、過小評価すべきではないと思われます。

国家主席が1年余りで辞任

ベトナムの国会は3月21日に臨時国会を開催し、ボー・バン・トゥオン国家主席の解任を決定しました。ベトナム共産党は前日の20日に臨時中央委員会総会を開催し、国家主席、政治局員、中央委員、国防安全評議会議長を辞任するというトゥオン氏の申し出を承認しました。

 

トゥオン氏の辞任理由は党規約に違反し党の信用を損ねたとされていますが、汚職防止委員会が調査に関与していたことから本人または部下の汚職が背後にあったと推察できます。前任者のグエン・スアン・フック氏は、部下の汚職事件の責任を取る形で2023年1月に国家主席を辞任しています。

 

ベトナムでは党序列1位が書記長、2位が国家主席、3位が首相、4位が国会議長に就任する慣例があります。国家主席は国家元首ですが、政府のトップは首相であるため、行政の実権は首相が握っています。序列2位とはいえ国家主席は政治面では名目的な位置付けにあるともいえます。その意味で、国家主席の辞任は、政治面での衝撃はさほど大きくないともいえます。

汚職撲滅を通じた権力闘争との観測も

ベトナムの汚職防止中央委員会は設立当初の2005年には政府の管轄下にあり、首相が委員長を務めていましたが、2013年に党の管轄へ移行し、書記長(党の最高ポスト)が委員長を務めるようになりました。グエン・フー・チョン書記長は汚職撲滅を通じて権力闘争を展開してきたという観測があります。皮肉なことに、チョン書記長の後継者候補とみられていたトゥオン氏も汚職撲滅の流れで辞任に至ったとも考えられます。

 

チョン書記長は2021年1月に党規約に反する形で3期連続で書記長に就任しました。チョン書記長は党内では保守派とみられており、以前には改革派のグエン・タン・ズン前首相と確執がしばしば伝えられました。チョン書記長は2026年には書記長を退任するとみられますが、トゥオン氏の辞任を契機に党内の改革派の勢力が相対的に強まるようになれば、長期的にはベトナム経済にはポジティブに作用する可能性もありそうです。

 

 

(2024年4月18日)

 

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

 

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【ベトナム】1-3月期GDPは市場予想を下回るも、年後半に「経済成長の加速」が期待できるワケ【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】』を参照)。

 

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