「円安阻止介入」目前!?…止まらない〈投機的円売り〉に終わりは来るのか【国際金融アナリストの見解】

4月2日~4月8日の「FX投資戦略ポイント」

「円安阻止介入」目前!?…止まらない〈投機的円売り〉に終わりは来るのか【国際金融アナリストの見解】
(※画像はイメージです/PIXTA)

日銀によるマイナス金利解除決定後も止まらない円安。要因とされる「投機的な米ドル買い・円売り」を打開するために、2022年以来の日本の通貨当局による「円安阻止介入」が実施される可能性も高まってきたと、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は指摘します。4月の相場の展開予測を詳しくみていきましょう。

投機筋による「ドル買い・円売り」が再拡大する背景

それでは、日米金利差の米ドル優位が縮小に向かったにもかかわらず、投機筋ではなぜ米ドル買い・円売りが再拡大に向かったのか? それは、金利差の大小の変化とは関係なく、米ドル優位の状況下においては、「米ドル買い・円売り」が圧倒的有利といえるためではないでしょうか。

 

足元の日米政策金利差の米ドル優位・円劣位は、3月の日銀によるマイナス金利解除で、5.6%から5.5%に縮小しましたが、依然として、記録的ともいえる「大幅な金利差」があることには変わりありません。

 

最近のように、日米の政策金利差の「米ドル優位・円劣位」が5%程度だったのは、2007年にもありましたが、この時にCFTC統計の投機筋の円売り越しは、18万枚以上に拡大しました(図表4参照)。確認できる限りで、同統計の円売り越しが15万枚以上に拡大したのはこの時だけなので、この2007年の円売りは、極端に行き過ぎた「円売りバブル」の発生といえるのではないでしょうか。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表4]CFTC統計の投機筋の円ポジションと日米政策金利差(2005年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

 

要するに、直近の日米金利差の米ドル優位・円劣位は、過去に「円売りバブル」が発生したときと同様の「記録的な大幅」となっているわけです。それを踏まえ、投機筋にとって有利な米ドル買い・円売りが継続し、ついに2022年10月の米ドル高・円安の記録も更新してしまった、ということではないでしょうか。

 

ただし、このような米ドル高・円安に対して、鈴木財務相は3月27日、「あらゆるオプションを排除せずに断固たる措置をとっていきたい」と発言しました。こういった表現は、私の経験則として、通貨当局による為替市場への介入が決まったあとで使う可能性が高いものです。

 

ちなみに、日本の通貨当局は2022年9~10月に円安阻止で市場に介入しましたが、介入前に実質的な責任者である神田財務官は、「あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある」(9月8日「三者会合」後の記者会見)と語り、この発言後、米ドル高・円安が進むとすぐに米ドル売り・円買いの市場介入に踏み切りました(図表5参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成
[図表5]米ドル/円の日足チャート(2022年9~10月) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成

 

この「神田発言」と上述の「鈴木発言」では、市場介入を示唆する「為替市場において必要な対応」という表現が、「断固たる措置」となっていることはあるものの、基本的には似ていると言ってよいでしょう。以上を踏まえると、通貨当局は2022年以来の円安阻止介入をすでに決めたか、あるいは決めつつある可能性が高いと想定します。

4月の注目点=投機的円売りと円安阻止介入の攻防

これまで見てきたように、根強い米ドル買い・円売りの背景には、日米金利差の米ドル優位・円劣位が大幅であることの影響が考えられます。それでは、この金利差が縮小に向かうかといえば、アメリカの景気は1~3月期も、実質GDPの伸び率が2%以上と底固い状況が続いているとの見方が強く、米国株も最高値圏での推移が続いている状況下においては、当面は見込みが薄そうです。

 

となると、4月にさらに米ドル高・円安が拡大するかは、今のところは大幅な金利差を拠り所とした投機的米ドル買い・円売りと、日本の通貨当局による円安阻止介入の攻防が最大の焦点といえそうです。

 

2022年の円安阻止介入では、介入を始めてから円安が一段落するまで約1ヵ月かかりました。ただ当時の米ドル高・円安は、米インフレ対策の大幅利上げが主因と見られ、そのような利上げの終了がまだ見込めない状況だったことを踏まえると、かなり厳しい判断だったと考えられます。それに比べると、今回は米利上げ再開の可能性は低いわけですから、介入によって円安を終息させることは、2022年時よりも見込みやすいようにも感じます。

 

以上を踏まえ、4月の米ドル/円は、投機的な米ドル買い・円売りと円安阻止介入の攻防が中心となる結果、145~154円での荒っぽい展開を想定しています。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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