(※画像はイメージです/PIXTA)

先祖代々受け継いだ土地や建物などの資産で、家賃収入を得て楽に暮らしている……そんなイメージの「地主」。しかし、先祖や家族から受け継いできた大切な資産だからこそ、特に相続においては多くの地主が頭を抱えることに。本記事では、地主の坂井一信氏(仮名)の事例とともに地主の厄介な相続対策について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

おおむね希望どおりだが、家族会議が必要に

真田と里見は、依頼者である坂井氏に対して以下のとおり提案した。

 

課題
・長男家への承継     → 孫の養子縁組、資産管理会社設立のうえ将来的に長男へ株式移転
・次男の収入サポート   → 資産管理会社の手伝いを行ってもらい給与を支給
・相続税納税資金について → 法人化により納税は可能な水準と考えられること
・悠々自適な生活     → 資産管理会社の代表を将来的に長男へ引継ぎ、本人はサポートにまわる
・長女への相続資産    → 養子縁組および遺言の作成により長女相続資産は減少(ただし、丁寧な説明が必要であることから、こちらについては後述する)

 

坂井は自分の希望に近い形となることで安心した。ただし、真田からは資産が長男家に集中することから、現段階においても将来の揉めごとを排除すべく、家族を含めて提案の機会を設ける必要性を述べた。

 

坂井も先代からの相続が、なんら話し合いのなかで急遽始まってしまったことに原因であると考えており、結果として実弟との関係悪化につながっていることへの反省を感じていた。

 

また、一方で法人化による新たな借り入れが生じることに不安があったが、この点については真田らが不動産収支の検証を行っており十分に返済可能であることを説明し納得した。

長男がほとんどの土地を継承…「遺留分」の分配方法

遺言の作成および孫との養子縁組により各人の遺留分は以下のとおりとなる。必要最低限と考えている長女および次男の遺留分は「6.25%」である。ここで坂井と真田らは遺留分を勘案した相続案についても打合せを行った。

 

出所:筆者作成
[図表17]各人の遺留分 出所:筆者作成

 

出所:筆者作成
[図表18]長女、次男の遺留分は6.25% 出所:筆者作成

 

出所:筆者作成
[図表19]不動産(個人) 出所:筆者作成

 

出所:筆者作成
[図表20]坂井家 資産相続案 出所:筆者作成

 

不動産の評価は時価の算定が難しいが、検証にあたっては相続評価額を前提とした。打合せの結果、妻には自宅を相続させ、それ以外の土地については長男に相続させることとした。

 

金融資産は相続発生までは変動するが、一旦法人化後の金融資産をもとに割り振りを行った。長女と次男には3,000万円を相続させ、妻には2,000万円、長男には生命保険の2,500万円として考えた。

 

また、孫については実質長男と同一であることから孫の分を含めて長男へ承継させることとした。ただし、今後の孫の成長により当主としての適性がついてきた場合には、土地の一部については孫に承継させることも検討したいと思っている。

 

この内容で、方向性を固め家族全員を招聘した会議を開催することとした。

 

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