スコアが90点以上ならば、車が必要ない環境
前回は、サンフランシスコ・ベイエリアとは独立した市場として高成長続けている、サクラメントの現況を説明しました。この地域は固定資産台帳ベースで建物比率が80%前後と高く、節税効果が望める場所として最適と考えます。
今回は、いわゆる「Walk Score」と不動産の付加価値(プレミアム)との相関関係について見てみましょう。
東京などの日本の大都市では「駅徒歩圏内の不動産はそれ相応の価値がある」という法則は当然といえば当然なのですが、車偏重であるカルフォルニア州では、必ずしもそうではないという状況をご想像頂き、本記事をお読みください。
「WalkScore」は、住宅探しをする人のためのサイトです。トップページの検索窓に住所を入力すれば、「歩ける場所かどうか(Walkability)」、つまり徒歩で通勤・通学・買い物・食事等の用が足りるかどうかを0点から100点で点数化されるので、評価が客観的に分かるようになっています。
一般的には70点以上がよいとされていますが、90点以上は「ウォーカー・パラダイス(歩行者天国)」と定義され、車が全く必要ない場所となっています。
筆者の会社のメルマガ・物件サイトにも、Zillow(すなわち、Zillow社の物件評価)とともにすぐに表示されるようにしています。たとえば、こちらの弊社リンクをご覧ください。
右側の帯に上から地図・値段と順にあり、値段の下にWalk Scoreを表示しています。点数が少ないものは車に頼らなければならないロケーションであることを意味します。ちなみに、Walk Scoreの下に、Zillow社での現在評価と、過去の価値推移を記載しています。
また、Walk Scoreのサイトで大変参考になるのは、サンフランシスコ・ベイエリアには、サンフランシスコ、オークランド、サンノゼ、サクラメント市内でのCrime Grade(犯罪の頻度)の評価もあることです。AからD評価になっており、サイト利用者による評価も加算することができるようになっています。
都市によって価格への影響は大きく異なる
さて、Redfin社(シアトルを本拠地にしている不動産仲介・調査会社)の調べによれば、高いWalk Scoreと住宅の売買価格に深い相関関係が認められるといいます。
2014年1月から2016年4月までの間に取引された1MM以上の住宅を参考にすると、Walk Score1スコアにつき、平均3,250米ドル(0.9%)のプレミアムが認められたそうです。特にサンフランシスコのような徒歩で動き回れる都市では、より高いプレミアムが確認されました。
下記の図表2つをご覧ください。全米の主要都市における住宅のプレミアムを比較したものです。上のものは1スコア上がることによる、中間価格からの価格プレミアムを各主要都市で比較したものです。
[図表1]各主要都市で比較する、中間価格からのプレミアム価格
下のものはWalk Scoreが60点から80点まで上がると、どの程度の価格プレミアムがつくかを全米の主要都市毎に調査したものです。これによると、サンフランシスコ市内では18万8000米ドルのプレミアムがつくということを意味しています。
[図表2]各主要都市で比較する、Walk Score 60点から80点までのプレミアム価格
実はオークランドもサンフランシスコと並び、サンフランシスコ・ベイエリアではWalk Scoreが比較的高い地域です。ところが、もともと「オークランド・ヒルズ」に所在するピーモンド、モントクレアは高級住宅が多く、車が欠かせない場所でした。今も高級住宅が立ち並んではいます。
一方、最近はBART駅そばにあるロックリッジ、エルムウッド、タマスカル、レークショア(ダウンタウンそばメリット湖周辺)が高い人気を獲得しています。おしゃれなレストラン、ショップを数多く見かけることができ、その周辺に住むのがトレンディーだとされています。
これは最近の住宅購入者の志向が変化したこともありますが、サンフランシスコ・ベイエリアでは、車偏重から公共交通機関の充実がなされてきたことが大きく影響しているものと考えます。
ただ、シェールオイルによるガソリン価格の値下がり、今後期待される自動運転が日常のこととなれば、Walk Scoreによるプレミアムも今がピークであるとも言えるかもしれません。
参考までに、全米主要都市の中で「ウォーカー・パラダイス(スコア90点以上)」のプレミアムが顕著な都市をグラフをご紹介します。
[図表3]プレミアムが顕著な都市一覧