仕事は「スピード」と「完成度」、どちらを優先すべき?
「スピードと完成度、どちらを優先したらいいのか?」ある課長から、こんな質問を受けた。
望ましいのは、部下が自分の力で期限までに仕事をやり抜くことだ。しかし、その課長の部下は、スピードを優先させると仕事の質が悪くなり、完成度に重きを置かせたら考え込んでしまうそうだ。
だからスピードと完成度、どちらを部下に優先させたらいいのか、わからないと言う。
実際に、このような悩みを抱えているマネジャーはとても多い。マネジャー自身が「ス
ピード派」ならスピードや量を重視する。「完成度派」のマネジャーなら、完成度や質に
気を遣う。
どちらも正解と言いたい。しかし、まだ経験が浅い若手には「スピード」を優先させる
べきだ。量と質と悩んだ場合でも同じだ。量を選ぶのである。
では、なぜ完成度に重きを置くのがダメなのか。量よりも質を選んではいけないのか。
その理由は次の3つである。
(1)大事なことを忘れてしまう
(2)悩みを深めてしまう
(3)途中で諦めてしまう
(1)完成度を優先すると、大事なことを忘れてしまう
完成度を優先させてはいけない最初の理由は、(1)の「大事なことを忘れてしまう」だ。意外と思われるかもしれない。だが、これが最もダメな理由である。
「ヘルマン・エビングハウスの忘却曲線」をご存じだろうか。この曲線は、いったん覚えた情報でも指数関数的に忘れていくことを表している。忘却曲線は24時間後にようやくなだらかになるが、「最初の20分」「最初の1時間」で急激に記憶から失われていくそうだ。
仕事を依頼したら、20分後。無理でも、せめて1時間後にはいったん着手してもらったほうがいい。まさに「鉄は熱いうちに打て」である。
もしそれができなかったら、依頼した内容を書き留めさせておくだけでもいいが、手を動かしてもらうほうが、記憶の定着度合いは高い。
「期限まで1週間ある」という場合でも、5分でもいいので着手してもらうべきだ。そうすることで、どれぐらいの時間がかかりそうか、部下自身も見当をつけることができ、期限直前に慌てて取りかかるということも防げるだろう。
つまり完成度を重視しようと思ったとしても、すぐに手を動かしてもらうことが重要だ、ということだ。