「わからないなりにやってみて」は禁句
多くのマネジャーに問いたい。部下に仕事を依頼する際、
「わからないなりにやってみて」
「まずは、自分で考えて手を動かして」
こんな曖昧な表現を使っていないだろうか。
特に注意すべきは、「とりあえず依頼」と呼ばれるものだ。
「とりあえず、この分析をやっておいて」
「どんな教育が最近のトレンドか、調べておいて」
このように思いつきで仕事を「とりあえず依頼」するマネジャーは、気をつけたほうがいい。これらの依頼は目的が明確でないゆえに、部下に質問されてもマネジャーは答えられない。そのため、
「この分析は何のためですか?」
「どんなデータを集めればいいですか?」
といった質問に対し、
「自分で考えろ」
と頭ごなしに叱って、部下は指示不足の中で仕事を進めることになる。仕方がないので部下は勝手に考えて仕事をすることになるのだが、そうすると
「誰がこんなやり方をしろと言った?」
と嫌味を言う。そして「ダメ出し」した後に、初めて自分のアイデアを披露するのだ。これは「ダメ出し文化」に染まってきた昭和世代の悪しき伝統だ。相手よりも自分のほうが優位だということをわからせるために、
「何事もまずは経験だ」
と言ってやり方を教えないのである。失敗させ、一度恥をかかせてから、上から目線で仕事を教える。
「私が新入社員だった頃は、いきなりお客様のところへ行かされたもんだ。上司は何も教えてくれなかった。泣きそうになりながらお客様のところをまわったんだぞ」
と過去のエピソードを話して聞かせるのだ。そして
「だけど、あの修業時代があったから、今の私がある」
と、過去を正当化するマネジャーは多いが、そんな修業時代はないほうがいいに決まっている。
自分が苦労したからといって、部下にも同じ経験をさせる必要はないのである。
「後出しジャンケン」がクセになっている上司の問題
「とりあえずやれ」
「まずは手を動かせ」
と指示し、後からやり方を披露するアプローチは、部下の成長に悪影響を及ぼす。「後出しジャンケン」のような指導は、経験学習サイクルの本質を見失わせるからだ。
このサイクルは、①経験すること、②多面的な視点からの振り返り、③新しい考えや理論の創造、④それらの試行、という4つのプロセスから成る。
しかし、実際には若い人々がこのサイクルを適切に遂行するのは難しい。特に、新しい考えや理論を作り上げることは非現実的である。
マネジャー自身も難しいはずだ。