(※画像はイメージです/PIXTA)

王道な相続対策として、ローンを組んで賃貸用アパートを購入・建築する手法があります。では、アパートローンを組む際、「元利均等」と「元金均等」のメリットが大きいのはどちらでしょうか。本記事では、アパートローンにおける元利均等と元金均等の総返済額について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏がシミュレーションをもとに解説します。

「元利均等」と「元金均等」とは?

元利均等は、元金と金利の合計が一定額の返済方法であり、借入当初は利息部分の割合が多く徐々に利息の割合が減っていく(図表2:左)。

 

一方の元金均等は、元金の返済額が一定額であり、当初返済額が大きくなるものの元金の返済に伴い、徐々に元利金の合計額が減っていく(図表2:右)。

 

出所:筆者作成
[図表2]元利均等と元金均等 出所:筆者作成

 

元利均等と元金均等の総返済額、それぞれシミュレーションしてみると…

アパートローンを借入する際には、多くの場合で元利均等返済が選択されていると思う。具体的にそれぞれの返済額については以下のとおりであり、シミュレーションにあたっては以下の条件で比較している。

 

条件:ローン150百万円 金利2.0%(借入期間中不変) 融資期間30年

 

出所:筆者作成
[図表3]「元利均等」と「元金均等」…それぞれの総返済額シミュレーション 出所:筆者作成

 

ただし、ローン完済までの総返済額については元利均等返済のほうが多くなる。昨今の低金利時代においてはあまり大きな差とはならないが、金利が上昇した場合には留意が必要である。ここでは上記と同様にローン150百万円、期間30年でシミュレーションを行った。

 

※上図におけるAは借入金額である150百万円のこと 出所:筆者作成
[図表4]金利上昇時の「元利均等」と「元金均等」…それぞれの総返済額シミュレーション/金利毎の総利払額の比較 ※Aは借入金額である150百万円のこと
出所:筆者作成

 

図表4の右側のハコで金利毎の総利払額の比較を行っている。

 

金利1.0%では約1百万円の差であるが、2.0%で約4.5百万円、3.0%になると約10百万円の差になる。一度、元利均等で借入をすれば、その後に元金均等で支払いをした場合と比較をすることは皆無かと思われるが、同じ借入金額であっても返済方法によって大きな差が生まれる点には留意したい。

 

なお、この差が発生する理由は元金返済の進み方の差によるものである。

 

金利が上昇!返済額はどうなる?

昨今の金利上昇局面においては、固定金利期間満了に伴う切り替え時などに金融機関から現状より高い金利の提案を受ける可能性がある。このときに金利がどのような線を描くのかは頭の片隅に入れておいたほうがよい。

 

少し極端ではあるが、本件では、金利が以下のとおり変動したとしてシミュレーションを行う。

 

《元利均等のケース》

借入:150百万円 

期間:30年 

金利:1-10年 1%/11-20年 2%/21-30年 3%

 

出所:筆者作成
[図表5]元利均等で金利が上昇した場合のシミュレーション 出所:筆者作成

 

[図表5:左]は1%が30年間継続したケースであり[図表5:右]においては10年ごとに金利が1%上がっていくケースである。ここで留意したいのは金利変更があったタイミングでは元金の返済額が一度落ちることである。当然のことながら毎月の返済額が上昇するとともに元金返済が遅くなることに伴い総利払額も増えることになる。

 

次に、元金均等についても検討を行う。条件については元利均等時のシミュレーションと同様とする。

 

出所:筆者作成
[図表6]元金均等で金利が上昇した場合のシミュレーション 出所:筆者作成

 

[図表6:左]が1%で推移したケース、[図表6:右]が10年ごとに1%上がっていくケースをシミュレーションしている。元金均等においては当然ながら元金の返済額は借入期間中一定であり、金利の変動があっても元金の返済額に影響はない。したがって金利についてのみ影響を受ける形となっている。

 

返済額の推移をみると11年目の2%に上がったタイミングで増えているが、21年目に3%に上がったタイミングではさほど増えていない。これは、元金の返済が一定額で進んでいるためである。

金利上昇時の総利払額は?

上記それぞれのシミュレーションによる総利払額をまとめたものが図表7のとおりであり、当該シミュレーションにおいては借入方法により約3百万円の差が発生している。
 

出所:筆者作成
[図表7]金利上昇時における元利均等と元金均等の総利払額 出所:筆者作成

 

 

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