夫の急逝で老後プランがすべて崩壊
木村千鶴さん(仮名)は68歳。地方都市に住み、夫の慎一郎さん(仮名)を長らく支えてきました。慎一郎さんは穏やかで誠実な人柄で慕われ、やさしいと評判の歯科医師でした。
かつてゼロから開業したことということもあり、自宅不動産と合わせて数千万円の借入がありましたが、千鶴さんと二人三脚で3人の子どもを育てながら10年ほど前に完済しました。
遅く生まれた末子が独立したのち、3年前からは年金を受け取り殖やして始めていましたが、慎一郎さんは個人事業主ながら、年金収入は夫婦あわせて月22万円ほどありました。年金額を大きく殖やしていたのは国民年金基金です。
慎一郎さんは若いころから基礎年金に上乗せし、国民年金基金に加入し、コツコツと掛金を拠出していたのでした。
働くペースを落としつつ勤労収入を得て年金収入も得る生活に、木村さん夫婦は満足していました。
「このまま70歳ごろまで働いていずれは引退してのんびりしよう」そんな風に夫婦で話していた矢先――事故により突然、慎一郎さんが他界してしまったのです。
今後受け取れる年金額に愕然
突然の出来事に、悲しみに暮れながらも諸々の手続きに追われる千鶴さん。年金の手続きに差し掛かったところで、膝から崩れ落ちるような事実が判明します。自分がこれから受け取れる年金額はひと月にたったの7万円程度しかない、ということがわかったのです。
千鶴さんはかつて担当税理士から、「国民年金基金は節税もできるし掛け捨てではない」と聞いていました。まだ65歳から3年分しか受け取っていなかったのだから、今後受け取れる金額も十分にあると期待していたため、混乱しました。
これまで国民年金基金にコツコツと掛け金を拠出し、老後に備えてきているから安心しきっていました。不動産やいくらかの現預金はあるものの、月7万円では到底生活できそうもありません。千鶴さんの目の前は真っ暗になりました。
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