(※写真はイメージです/PIXTA)

長年連れ添った夫婦でも、まだ知らないことがあるかもしれません。場合によっては、後々思わぬ形で発覚し、配偶者を窮地に追いやる事態となるケースも……。本記事では、福田さん(仮名/67歳)の事例とともに身近な相続トラブルについて、FPの小川洋平氏が解説します。

40年連れ添った妻、急逝

福田敦さん(仮名/67歳)は建設会社を経営する経営者です。妻である小百合さん(仮名/69歳)の父が経営していた建設会社に28歳で婿入りし、先代社長から会社を受け継ぎ20年のあいだ、夫婦で経営してきました。

 

2人には子供ができずにいましたが、結婚してもうすぐ40年にもなろうとしているときでも仲がよく、周囲も羨むおしどり夫婦でした。

 

社員20名程度の中小企業ですが、会社の経営は順調です。福田さんもそろそろリタイアを考える年齢。子供もいないために長年勤務してくれている社員に事業承継の準備中です。リタイアしたら、夫婦で年金月40万円を受け取りながら、蓄えを取り崩しつつのんびり暮らそうと、考えているところでした。

 

しかし、そんなある日、小百合さんが心筋梗塞でこの世を去ってしまったのでした。これまで持病もなかったため、妻の早すぎる突然の死に福田さんはなかなか現実を受け入れることができません。なんとか葬儀を済ませ、長年連れ添った妻はもういないんだと、ようやく実感し始めたころ、福田さんにとって驚きの事実が発覚します。

 

なんと亡くなった小百合さんには娘がいたのです。その娘から連絡があったのでした。

 

離婚歴があることは知っていた福田さんでしたが、娘がいることは聞いていませんでした。亡くなってから知ったこの事実には衝撃を受けます。

亡き妻の過去

小百合さんの娘と名乗る真奈美さん(仮名/45歳)と近くのカフェで会うことにした福田さん。真奈美さんから小百合さんと離れてからの事情を聴くことができました。

 

小百合さんが離婚したのは真奈美さんが1歳になろうとするころで、真奈美さんは母親である小百合さんの記憶はなく、小百合さんの元夫である真奈美さんの父親から聞かされていた程度でした。小百合さんは嫁入りした家で義父母との関係が上手くいかずに家を出ることになり、そのまま真奈美さんの前に姿を表すことはなかったと言います。

 

そして、その後に真奈美さんの父は再婚し、異母姉妹となる妹ができましたが、継母にとっては初めての育児で妹の世話ばかり、父は仕事であまり家に帰らなかったために真奈美さんは孤独な幼少期を送ったそうです。

 

その後、高校を卒業してからは家計も楽ではなかったため、大学の進学資金を出してもらうのも遠慮し、自分で奨学金を借りて進学。その後は都内の企業に就職し結婚、現在は高校生の息子がいるとのことです。

 

そして、父から生き別れた母の死の報せを聞き、福田さんに連絡したのでした。事情を聴いた福田さんは真奈美さんを自宅に招き入れ、亡き母の遺影と対面させました。その日は、真奈美さんは福田さんに礼を言って帰っていきました。

 

しかし、その数日後、福田さんにとって予想外のことが起きます。真奈美さんの代理人という弁護士から、小百合さんの遺産を求める旨の文書が届いたのでした。その文書には、小百合さんの遺産の半分を相続する権利が自分にはあるため、相続財産の法定相続分にあたる50%を受けたいというものでした。

 

それを見た福田さんは、福田さん自身には子供もいないうえ、これまで母から愛情を受けられなかったことを不憫に思い、せめてお金だけは渡そうと考えます。妻の預金資産と生命保険金の分を真奈美さんに渡そうとしましたが、このことが大きな問題となったのでした。

 

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