(※写真はイメージです/PIXTA)

「国民年金基金制度」は、国民年金法の規定に基づく公的な年金です。国民年金とセットで、自営業者や個人事業主など、国民年金の第1号被保険者における老後の年金収入の上乗せになるものです。しかし、加入時には注意点があって……。本記事では、夫の急逝によって老後破産の危機に陥った木村さん夫婦(仮名)の事例とともに、FPオフィスツクル代表の内田英子氏が、国民年金の第1号被保険者が老後資金を備える方法について解説します。

国民年金基金の“型”に潜んでいた「夫のミス」

慎一郎さん亡きあとの千鶴さんの家計の状況をおおまかにとらえると、以下のようになります。

 

手取り年収:年間およそ84万円(基礎年金+厚生年金)
資産:現預金 およそ2,200万円(小規模企業共済の共済金、生命保険の死亡保険金300万円を含む)
   不動産 およそ5,000万円(自宅+クリニック)
年間支出見込み額:およそ420万円(夫婦二人の年間生活費600万の7割と仮定)

 

定期的な収入が少ない一方で、資産は不動産に偏っており、取り崩せる流動性のある資産が少ない点が目立っています。

 

さらに、これまでの生活水準から今後を投影すると、仮に不動産を含めた資産をすべて有効活用できたとしても、20年程度で資産が尽きてしまう見通しです。年金収入が少ないことも千鶴さんの不安を大きくしました。

 

慎一郎さんは若いころからコツコツと国民年金基金に掛金を拠出し、老後に備えてきました。しかし、慎一郎さんが加入していたのは国民年金基金の「B型」といわれるもので保証期間がなく、遺族給付がないタイプのものでした。

 

木村さん夫婦は担当税理士から、「節税効果も見込め掛け捨てではない」と聞いて、節税効果を重視しB型に加入したとのことでした。国民年金基金にはさまざまな型があり、なかには慎一郎さんが加入していたもののように、掛け捨てのものも存在します。

 

保証期間があるものを組み合わせる場合、受け取れる期間に限りがありますが、もしも長生きされなかった場合には、遺族が残りの保証期間に応じた金額を受け取ることができます。

 

したがって、もし慎一郎さんが1口目はB型のままとしても、2口目以降保証期間15年のI型を組み合わせていたら、I型から慎一郎さんが受け取るはずだった残り12年分の年金相当額を千鶴さんが受け取れていた可能性があります。

 

国民年金基金は加入後任意で脱退したり、一口目の型を変更したりすることはできません。国民年金と名称は似ていますが、あくまで私的年金の1つであり、給付の範囲は限定的で支払った掛金に応じます。

 

また、終身年金といってもあくまで老齢年金が本人にのみ保障されるものですから、厚生年金のように終身の遺族給付はありません。ご本人に万が一の際の遺族の生活費を補う手段は別に考えておく必要があります。

 

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