個人事業主の万が一に備える…残される配偶者を困らせないために
万が一の際、事前にこのような状況が想定されると気づくことができていたら、事前に以下のような対策がとれていたかもしれません。
1.妻の年金を増やす
慎一郎さんは国民年金基金に加入しており、慎一郎さん自身の年金収入はある程度確保できていました。しかし、これはあくまで慎一郎さんのものであり、妻自身が受け取れる年金は基礎年金だけでした。
個人事業主世帯に限りませんが、妻の年金を増やすためには妻自身が加入者となり公的年金や国民年金基金等の私的年金に加入する必要があります。
場合によっては、年金を繰り下げたり、青色専従者控除は受けられなくなるものの、妻の働き方を見直し、企業に勤め厚生年金に加入するのも選択肢の1つでしょう。
妻の年金収入を増やすことができれば、将来妻の認知機能が低下した際に考えられる資産凍結による資金枯渇リスクも低減できることが期待されます。
2.退職金をつくる
退職金はいうなれば、受け取りを先送りした報酬です。個人事業主の方が退職金をつくる方法として以下のような公的制度があります。
・iDeCo(個人型確定拠出年金)
いずれも掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」となり、まとまった節税効果が見込まれるものですが、担当の税理士の方からは教えてもらったことはない、というお声を筆者は聞くことがあります。
慎一郎さんもiDeCoは未加入で小規模企業共済には加入していたものの知ったタイミングが遅く、担当税理士が変わったのを機に知り、10年前に加入されたとのことでした。しかし加入後は10年間満額月7万円拠出していたことで、1,000万円程度の共済金を受け取ることができました。
いずれも個人事業主が加入し、自ら退職金、あるいは年金をつくるものです。長く加入していれば節税しながら資金を積み立てられますし、小規模企業共済であれば貸付の利用や、iDeCoは障害給付といったそのほかのベネフィットもあります。
掛金を自由に引き出すことはできませんが、セーフティネットを構築する手段として考えられます。
3.所得補償だけではなく死亡保障ももつ
木村さんのケースでは、慎一郎さんの保障は就業不能時の所得補償保険に偏り、死亡保障がほとんどありませんでした。個人事業主世帯の場合、年金が少ないことから収入が途絶える老後も、ある程度の死亡保障があることが望ましいケースは少なくありません。
保険料の負担もありますから無理に加入する必要はありませんが、木村さんの場合ももし慎一郎さんの死亡保障がもう少し多くあれば、千鶴さんが抱く今後の見通しは少し明るいものになっていたかもしれません。
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