FRBが量的引き締め(QT)の見直しを始める「背景」
直近は、「有担保」のレポ金利が誘導レンジを“上抜け”
では、[図表3]で、2つの翌日物金利の直近の動きを見てみましょう。
実効フェデラルファンド金利は、その誘導レンジに安定して収まっています。他方で、レポ金利には昨年11月以降しだいに上昇圧力が生じ、(①家計の現金引き出しニーズや、②金融持ち株会社によるバランスシートの「お化粧」で資金需給がひっ迫する)昨年末には、誘導レンジを「上抜け」しています。
有担保の翌日物レポ市場に資金が供給されにくい状況は、FRBとしても看過できない
先述のとおり、FRBの金融政策目標やニューヨーク連銀のオペレーションは、実効フェデラルファンド金利を誘導レンジに収めることですから、レポ金利がこのレンジを外れても「任務未達」ではありません。
しかし、有担保のために(無担保であるフェデラルファンズ取引よりも)安全であるレポ取引の金利のほうが誘導レンジを「上抜け」する状況は、少なくともレポ市場には資金が供給されにくくなっている(あるいは、担保を取ってでも貸し付けたくない取引先がいる)ことの現れで、FRBにとっても看過できない状況です(→ローガン・ダラス連銀総裁などが指摘するところです)。
それゆえ、FRBは量的引き締め(QT)の見直しを始めています。
合わせて、[図表3]のとおり、取引高加重平均ベースの実効フェデラルファンド金利は安定しているものの、各日のフェデラルファンズ取引のうち約定金利が高かった上位1%の約定金利をとると、[図表4]に示すとおり、利上げに沿って、実効フェデラルファンド金利から「上離れ」しています(→合わせて、2020年3月頃のパンデミック発生直後や、昨年3月の銀行危機のときには取引高が増加したことが確認できます)。
有担保の翌日物レポ市場に資金が供給されにくくなっているとすれば、無担保のフェデラルファンズ市場にも資金は供給されにくくなっていると考えることが自然です。