パーティー券購入に至った経緯
経営者Aは食品卸を営むA社の創業社長である。真面目で実直なA社長は長年に渡る信用と実績によってA社を資本金5億円、売上金額100億円規模の企業に育て上げてきた。今期の会社の利益は5億円程度計上されそうである。
A社がこれだけの会社に育ったのは、大手スーパーを営むO社のお陰である。O社のO社長はA社へ大量に発注してくれるだけではなく、これまで多くの取引先を紹介してくれた大恩人である。A社長はO社長に対しては足を向けて眠れないほどの恩義を感じていた。
O社長からの紹介で出会った青年の正体
ある日、O社長から電話がありA社長にぜひ会わせたい人がいるということで、後日アポイントメントを取った。A社長はどのような人と会わせてくれるのか楽しみに、その日を迎えた。
O社長と同行してきたのは溌溂とした好青年Sであった。O社長「このS君は私の大学の若い後輩で政治家を志しこの度国会議員に当選したんだよ。先が楽しみだから紹介しておくよ」ということであった。
S議員は「今度お近くで私の後援会主催のパーティーがあります。A社長にも是非ご臨席賜れば有難いです」と誘ってきたのであった。
A社長はO社長の顔を潰さないためにも、日ごろのお返しをする気持ちで「もちろんパーティー券買わせて頂きます。一枚2万円ですね。承知しました。150人分まとめて買い取りましょう。合計300万円ですね。後日経理部から支払います」と約束した。
A社経理部ではA社長から指示を受けS議員後援会側に支払いを起こし、パーティー券購入費の領収証の交付を受けた。
A社経理部長は政治家のパーティー券購入費用は、実質的に政治献金の一種であると判断し、全額を「寄付金」として会計処理をした。一般寄付金であるとの判断から損金算入限度額は、
(資本金5億円×0.25%)+(所得5億円×2.5%)
この合計額を1/4した金額であるから343万7,500円
今回の支出額300万円はその範囲内であるため、全額損金として税務申告を行った。
一方、A社長はあとになってパーティー開催の当日がほかの取引先とのゴルフで、参加自体が難しいことに気が付いた。しかし、パーティー券をまとめて購入したことでO社長の顔が立ったのならそれでよかったと考えたのである。結果的にそのパーティーにはA社側からの参加者はいなかった。
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