高い金利は魅力だが、リスクの高い「高金利通貨」
高金利通貨国のひとつであるトルコの国債は、高い金利が魅力的。そのため、購入を検討している人もいるのではないでしょうか。もしかしたら、金融機関でお勧めされることがあるかもしれません。
小遣いで買うのであれば悪い話ではないと思いますが(理由は後述)、リスクがあることだけはしっかり認識しておきたいものです。
儲けようと思えば、必ずリスクを覚悟する必要があります。リスクなく儲かる商品など存在しないからです。万が一そんな商品が存在したとしても、読者の目に止まる前に、プロたちが買い占めてしまうでしょう。
そもそも、トルコ国債を持っているだけでリスクなく高い金利を受け取れるなら、金融機関が自分たちだけで持っているはずで、読者には売ってくれないでしょう。
トルコが外国の庶民に「国債を買って!」と頼むのは、なぜ?
筆者の好きな言葉に「相手の立場で考えよう」というものがあります。
道徳の先生がイジメっ子に「イジメられる人の立場に立って考えなさい」と諭すときなどに使いますが、筆者が関心を寄せているビジネスの領域では、「ライバルの立場に立ち、ライバルがなにを嫌がるか考える」ときに使います。
たとえば「必ず儲かる投資商品」を読者に売ってくれるという人がいたら、「自分が必ず儲かる投資商品を持っていたら、見知らぬ人に売ってあげるだろうか?」と考えるわけです。それによって詐欺の被害に遭う確率は大きく下がるはずです。
筆者は、講演や原稿でも、自分が言いたいことではなく、相手が聞きたいこと、知りたいことを話したり書いたりするように心がけています。
もっとも、大学での講義は違います。こちらが「これは知っておいてほしい」ということを話します。なぜなら、多くの学生が欲しいのは「単位」であって、経済学の知識等ではありませんから(笑)。
相手の立場で考えるというのは、「言うは易く行うは難し」です。たとえば将棋や囲碁では、自分の指したい手より相手が嫌がる手を指すべきなのですが、相手が嫌がる手を見つけるのは容易ではありません。しかし、下手な将棋指しである筆者は、対戦相手が離席したときに相手の席に座って見たことがあります。なんと、「この手は指されたくない」という手がはっきり見えたのです(笑)。
さて、トルコ政府の立場に立って考えて見ましょう。外国の庶民に「高い金利を払いますから金を貸して下さい」と頼んでいるのはなぜでしょうか? それは、世界中の銀行に「低い金利で金を貸して下さい」と頼んで断られたからですよね。
筆者はトルコの事情に詳しくありませんが、世界中の銀行から断られたというだけで、相当高いリスクがありそうだ、ということが容易に想像できるわけです。通貨が暴落するリスクか、トルコ政府が破産して満期に償還されないリスクかのいずれかなのでしょうが、とにかくリスクがあるのです。
小遣いでバクチを楽しむなら、悪くないかも…!
高金利通貨はリスクがありますから、大切な老後資金を投資するのはお勧めしませんが、小遣いの範囲でバクチを楽しむのであれば、悪くないかもしれません。
銀行等は臆病(慎重)なので、「金利は10%だが10%の確率で償還されない」という国には貸しません(ここではトルコリラが暴落するリスクのことは考えないことにしましょう)。「金利は14%だが10%の確率で償還されない」という案件なら、貸すかもしれませんが。
ということは、読者は容易に「金利は12%だが10%の確率で償還されない」という国債を手に入れることができるかもしれません。
これは、確率的に儲かる(「期待値がプラスだ」といいます)案件なので、カジノ(期待値がマイナス)でバクチを楽しむ代わりに高金利通貨国債を買う、というのは選択肢でしょう。
高金利通貨に投資するにあたり注意が必要なのは、為替手数料です。高金利通貨を買うときと、満期償還された高金利通貨を売るときには、結構高い為替手数料がかかります。バクチだからといって短期勝負に挑むと、期待値のプラスより為替手数料の方が大きくなってしまうかもしれません。
「高金利通貨を長期間保有して、高い金利を長期間享受する」を目指すべきでしょうね。
「米国人の為替リスク」と「日本人の為替リスク」の違い
トルコ国債の金利が、米国債の金利よりも5%高かったとします。米国人投資家にとっては、「米国債を持てば為替リスクが無いのに、トルコ国債を買うと為替リスクがあるのだから、金利が5%くらい高くないと買いたくない」ということなのでしょう。
日本人投資家からすると、「米国債もトルコ国債も為替リスクがある。トルコ国債の為替リスクの方が大きいけれど、金利差が5%もあるのなら、トルコ国債も十分魅力的だ」ということになるかもしれませんね。
もっとも、米国人のほうが日本人より大胆(ハイリスク・ハイリターン志向)なので、結果として日本人のほうがトルコ国債を多く持っているのか否かはわかりませんが…。
本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
塚崎 公義
経済評論家
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