多数の物件を抱えていたため、トラブルも多発
仲村家には銀行借入はなく、物件からの収益もよかった。固定資産税はあるが、赤字ではない。キャッシュフローは非常に健全だった。
多数の物件を抱えているので小さな問題は散見されるが、経営に影響を及ぼすような大きな問題はなかった。
しかし細々した問題は多かった。
「以前から義父に、使えないもの、金銭的に収入のないものは、すぐに売却したほうがいい、と言っていました。でも、何を言っても聞いてくれないし、何を持っているかも教えてもらえなかったんです。義父が亡くなって、全部リストにして、わぁ、思っていたよりもだいぶ大変だ、となりました」(優香さん)
リストアップした物件は、私が用途別に分けて番号を振った。大小合わせて46はあった。個人ではとても管理しきれない数だ。
相続した頃に活用していた不動産は6割程度。残りの4割は、林や草地だった。土地の数が多く、面積も広い。必然的に、隣地が多く、関係者も多い。
「隣地が多いということは、いろいろな苦情があるということです」(太一さん)
例えば、仲村家の所有地が草ぼうぼうであれば、「虫が出るからなんとかしろ」という苦情がくる。
「草があるところは業者に頼んだり、自分で除草剤を撒けるところは自分でやったりしています。苦情にはなるべく早めに対応してはいます」(太一さん)
太一さんが早朝から草取りをして除草剤を撒くと、今度は別の人から「庭で育てている園芸植物に影響するから除草剤はやめてくれ」と反対のことを言われることもある。
森があって緑が豊かな土地だから購入した、という方もいただろう。しかし別の方からは落ち葉が飛んできて迷惑だ、と言われる。業者を頼んでその木を急いで伐採すると「ちょうどいい木陰だったのになぜ切ったんだ!」と別の人から苦情がくる……といった具合だ。
仲村家が貸している物件は比較的古いものが多く、管理会社に依頼しているわけでもなかった。かかってくる電話のほとんどが土地への苦情か建物の不具合に関するものだった。
市役所や警察へも苦情が行くことがあり、夫妻は対応に追われた。
「以前、自宅に人相の悪い人が玄関をガンガン叩いて、竹が伸びて家に日差しが入らなくて困る、と苦情を言いに来たことがあったんです。義父が対応したのですが、娘たちも小さかったので、本当に怖かった。でも、土地を買った当初から、日陰になるとわかっていて買ったはずなんですよね。それでも竹は切りましたけどね。でも切ったら切ったで、切り過ぎてまぶしいとか……もう終わりのない感じです」(優香さん)
それなら他の場所に住めばいいのに、と思うが……世の中にはいろいろな人がいて、地主は往々にしてそのはけ口にされてしまう。
松本 隆宏
ライフマネジメント株式会社
代表取締役
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