(※写真はイメージです/PIXTA)

先祖代々受け継いだ土地や建物などの資産で、何もしなくても家賃収入を得て楽に暮らしている、と世間からは思われがちな「地主」たち。しかし、古くから持っている土地ゆえに、その管理に苦しむこともあります。地主専門の資産防衛コンサルタント業に従事する松本隆宏氏の著書『地主の真実』より、令和時代の地主たちが抱える深刻な問題を、具体的な事例をもとに見ていきましょう。

先代亡き後、夫婦を襲った「借地問題」

先代が亡くなって一番困ったのが、借地関連の問題だった。

 

太一さんの代になったときに黙って返してくれた土地もあるが、何件かそのままになっている土地もある。

 

「義父は優しくて、頼まれるとノーといえないタイプでした。それで言われるままに人に貸したり売ったりしていたため、中途半端に小さい土地が多数残ってしまいました。活用の仕方や土地の扱い方に問題があったのに、私たちには黙っていたので、大変でした」(優香さん)

 

どういうふうに借地が始まったのか、借地人との関係はどうなのか、太一さん夫妻は、先代から一切聞いていなかった。

 

「なにせ、昔ですから、書類をネズミにかじられてしまったものもたくさんありました」(太一さん)

 

契約書がないものもあった。

 

勝手に建物を建てる借地人も…10年間まったく気がつかず

「義父の契約の多くが口約束でした。しかも相手は、すでに亡くなってしまったり、老人ホームに入ってしまったりしています。その子どもや孫に聞いても『書面はないのでわからない』と言うばかりでした。事実を調べるのに3~5年くらいかかってしまう。もうぐちゃぐちゃです」(優香さん)

 

借地人が勝手に建物を建てても10年間まったく気がつかなかった、ということさえあった。

 

「昔はなぁなぁでやってきたんでしょうが、土地の境界がきちんとしていないと、やはりわからないですね。きちんとこちらで区切ったところで、相手がサインしてくれない、判を押してくれないなど、まだありますね」とやや呆れて話す太一さん。

 

借地料はもらっているが、昔の金額のまま、非常に安いものもあった。

 

この土地は弁護士を通して物件を整理した。このような案件が膨大にあり、それを一つひとつ確認していく作業が大変で、まだいくつか残っている状況だ。

 

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次ページ多数の物件を抱えていたため、トラブルも多発

※本連載は松本 隆宏氏による著書『地主の真実』(マネジメント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

地主の真実

地主の真実

松本 隆宏

マネジメント社

世間一般にイメージと違う地主の真の姿を明らかにし、どのような問題をかかえ、どのように解決し資産防衛してきたかを著者=「地主の参謀」がレポートした。

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