【家族構成】
父(先代)、母、万里江(娘)、横井さん(娘の夫)
※すべて仮名
「起こってからではもう遅い」相続税対策
万里江さんの父、つまり先代が亡くなったのは平成から令和になる平成31年2月。81歳だった。
以前から具合が悪そうだったので家族は通院をすすめていたが、
「頑固な性格で『俺は仕事があるから入院できねえんだ』って、絶対に入院してくれなくて。本当に体調がよくない、という日に、母と一緒に病院に行ったら、即入院。それから丸2日で亡くなってしまいました」(万里江さん)
急性腎炎だった。突然のことに皆が驚いた。
「まず困ったのは、家の資産や会社の資産を、誰も100%は把握できていなかった、ということです」(万里江さん)
先代が亡くなる数年前から、一人娘である万里江さんは事務作業を手伝っていた。最低限の現状維持はできるようにはなっていたが、所有している土地の全体像は完全に把握できていなかった。まして、担保や権利がどうなっているかなどわからないことだらけだった。
相続税対策をする前に、親が亡くなってしまった
万里江さんと私は数年前に知人の紹介でお会いしていたが、先代が亡くなった直後に、万里江さんから私にご連絡をいただいた。
「父が存命のときからお願いしていたら違ったと思うんですが、父は『俺がやるんだ、お前は心配するな』と頑固な人だったので、たぶん話を聞かないなと思って、そのときはお願いできないでいました」(万里江さん)
先代の生前であれば、不動産を買ったり、既存の土地を活用したり、いろいろな対策は考えられた。
多額の相続税で、事業が傾いてしまうパターンも
先代が多額のキャッシュを残したのは、自身が相続税に苦しめられた経験からだろうと万里江さんは言う。
「父の両親、私から見ると祖父と祖母は、4か月違いで亡くなっているんです。祖父が2月で、祖母が6月。半年以内に2人分の相続税がドカンと来たので払いきれず、土地を担保に10年ローンを組んだ、と聞きました」
その返済がとても重かったという。先代は必死になって返済し、10年ローンを7年で完済した。
「父はご先祖様から受け継いだ土地は絶対に売らない、と決めていました。ローンの終わりが見えてきたら、もう全部完済するぞ! とドカッと完済して。完済直後は銀行に100万円も残っていなかったそうです」(万里江さん)
万里江さんの実家の手持ちは一時的に尽きたが、その後は不動産収入が入ってくるばかりになった。
「相続税で事業が傾いてしまう地主さんもいらっしゃると思います」(横井さん)
万里江さんの夫である横井さんがそう言うように、地主にとって相続税は大きな打撃となる。
しかし相続が発生したあとでは、できることはほぼない。
運よく払えたが、相続税対策の必要性を万里江さん夫妻は痛感した。
現在、先代の妻である万里江さんのお母さんの相続税対策をしており、おそらく何もしなければ数億円になるであろう相続税の節税も、ここ数年の取り組みにより大幅に軽減できている。
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