築年数よりも「収益性」を重視する投資家
前回の続きです。
●投資家
投資家については、法人、個人ともにシビアな査定をします。ただし中古区分マンションをメインに扱っている不動産投資家は、区分マンション好きが多いです。
投資家が好む物件というのは人それぞれですが、収益性が高ければ、1995年以前の築古物件は投資家向きです。築古物件には様々なリスクがあり、耐用年数の問題でローンも組めないため、業者では扱いにくいのです。
私が買取会社の営業マンであれば、正直なところ、いくら立地がよくて利回りが高くても、1990年の築古物件は売りにくいです。築25年なので、ローンは20年までしか組めません。そのため、ひと月の支払い額が大きくなってしまいます。やはり35年ローンが組めるように逆算すると、物件は新しいほど転売しやすいと考えます。ですから、2000年以降の築浅物件は、業者に売ったほうが賢明でしょう。
いずれにしても、投資家は利回りが高ければ、どれだけ古い物件であっても買います。投資家はある程度の資金があったり、不動産の知識と経験でリスクをカバーすることもできるので、業者が扱わない難アリ物件でも問題ないのです。
また相続対策、節税対策のための法人・個人は、キャッシュフローを見るのではなく、物件の資産性や減価償却のスピードに鑑みて評価をします。ですから一概には言えません。どちらにしても、買取会社とは違った視点で区分マンションを購入するということですから、買取会社向きではない物件の売却には最適です。
知名度のあるエリアにこだわる「外国人投資家」
●外国人投資家
外国人投資家というのは、中国や台湾などから、日本の区分マンションを現金で購入しにくる人を指します。世界基準で見れば「日本の不動産はまだまだ安い」という印象が強いため、高額売却が可能です。
ただし、外国人投資家が買いたいと思う物件は、日本人と基準が少し異なります。その基準は、築年数でも間取りでもなく、とにかく立地が第一です。
立地といっても、日本人の感覚とはまた異なります。たとえば東京の杉並区は、日本人にとっては好立地ですが、外国人はその地名を知らないため、興味を引きません。「自分は新宿の物件をもっているんだ!」と言いたいがために、知名度のあるエリアの物件をほしがるのです。しかし、地名にこだわるにもかかわらず、最寄り駅が新宿駅であることには執着しません。たとえば大久保駅であっても、同じ新宿区であればいいわけです。
また、中国人投資家でよく聞くのは、エントランスへのこだわりです。バブル期に建てられたマンションのエントランスには、個性的でインパクトのある銅像やオブジェが置いてあったり、インテリアも奇抜なタイルが貼られていたり、床に赤い絨毯が敷かれていたりします。このような派手な物件は、日本人であれば見向きもしませんが、外国人にとっては好みのデザインに該当するのです。
さらに、1階が店舗で、コンビニが入っているマンションも好まれます。利回りと立地とエントランスが気に入れば、中国人投資家が高く買ってくれます。
なぜ彼らは、日本の区分マンションを購入するのか? その理由は、中国人投資家には、政府からいつ財産を取り上げられるかわからないという懸念があるからです。そこで、お金の逃がし方として、国外の不動産を所有しておくのが一番堅いらしいのです。
一般的な日本人であれば、相続対策の場合を除き、自分自身の資金や属性で物件を購入するものです。ところが中国人は、子どもに高額のお金を使います。
私の経営する会社は台湾に支社をもっているのですが、そこで働く中国人社員が、社内で扱っている仲介物件を自分で購入したことがありました。その際、代金はすべて父親もちです。中国では、親が子どものためにお金を出すのは当たり前なのだそうです。
加えて外国人投資家は、「日本の不動産を購入する=日本の空気を買っている」という感覚をもっています。日本に不動産をもつことは、実用性も含めて、ひとつのステータスになるのです。
さらに地震に対する建築水準の高さや、自国から近い距離感、手頃な不動産価格、しっかりとした法整備に基づく犯罪リスクの低さなども、日本の不動産に対する投資意欲につながっているのではないかと推察します。
そして彼らが日本の物件を購入しようと検討したときに、最も手を出しやすいのが、中古のワンルームマンションなのです。