「未公開情報」でなくなった途端、物件の価値は激減
1996年頃、中古の区分マンションの流通数は7000件でしたが、今は7万件。つまり20年の間に、マーケットは10倍にまで成長していることになります。
よく新卒の社員に言うのですが、区分マンションの卸を専門にする買取不動産業というのは、とてもニッチな業種でした。当時「売りませんか?」と営業して提案することはかなり画期的で、都内でも、そのような会社は10社もありませんでした。
そんな中で、買主である業者をどのように増やしていったかと言えば、業者の口コミを使ったり、「レインズ」で検索をして、電話で「御社は買い取りをやっていますか?」と問い合わせたりしたのです。
そこで買取をやっているということであれば、「一度お会いしたいです」とアポイントをとって会います。たとえ会わなくても、「とりあえず物件情報のFAXだけでも、お願いします」という会社もあるので、そこにFAXを流してどんどん開拓していきます。
最近の動向で言えば、2016年1月に、大阪に支店を出しました。ですからその1年前は、まさにかつてのアナログ営業を再現した年になりました。取引先となる買取会社を、自分自身で開拓したわけです。こうした努力が実り、買取をしていただける業者は、すでに20社ほどあります。
どの会社にも、買取担当、仕入れ担当がいます。「仕入れ担当の人をお願いします!」と取り次いでもらい、その担当者に「御社は中古の販売をされていますか?では、仕入れが必要ですよね? 弊社が卸しますよ!」と、話をしていきます。
先方も、情報はもちろんほしいし、必要なのです。ですから、もうそこで、「それは未公開ですよね?」という話はまずありません。レインズに載せて図面を流す必要などないのです。業者間では、当然のことです。
レインズに出してしまえば、いわゆる「未公開情報」ではなくなり、日本全国の業者が見ることのできるオープン情報となります。そうすると、物件の価値は著しく下がってしまいます。そこで私の経営する会社では、レインズへ出す前に、スピード勝負で未公開状態の情報を、適切な業者に出していきます。
【図表】首都圏中古ワンルーム流通事例数と平均築年の推移(2015 年は1 ~ 9 月)
良い物件の売却は基本的に「1週間」で決まる
専任媒介契約を結ぶと、1週間後にはレインズへ登録しなければいけません。情報を表に出すまでの「7営業日」が勝負なのです。良い物件は、基本的には1週間で決まります。媒介契約書は、期間が3カ月単位となっています。しかし、3カ月間営業しても、実際には意味がありません。
ファミリータイプの区分マンションや、戸建ても同じでしょう。やはり1カ月で客付けできない業者は、2カ月以上頼んでも意味がないと思います。それは、沖氏が仰るように、土地でも同じことです。辛抱強く2〜3カ月も待っていても、引き合いがくるとは到底思えません。
そのための金額調整も重要です。具体的には、1カ月目に、強い金額でやっていきます。確かに、「これはさすがに反響がこないだろう」という額で提示して、徐々に下げていくというのもやり方です。しかし今は2018年までという期間が決まっているので、あまりゆっくりと売るのはお勧めできません。
反響を得るためには、やはり適正な金額で出すことが肝要です。具体事例として、3年前に1000万円した物件が、今、1300万円で売れたケースを引き合いに出して、どのように値付けを行うべきか解説していきましょう。
安い「指値」が入ってくることを前提に値札を付ける
業界ではよく「値札」と言いますが、2000万円の値札を付けたら、「それはちょっと高い!」となります。そこで2000万円ではなく、1800万円にしておくことにより、「おや、もうちょっと下がるかな?」という印象を与えます。
たとえば仮に、売主である不動産オーナーが、着地点として「1500万円で売りたい!」と言ったとしましょう。指示通り1500万円の値札を付けたら、買主は絶対にそれよりも指してきます。不動産では「指値」といって、金額交渉を行うのが一般的なのです。ですから、そこを考えて300万円、400万円とやや高くして、指値を前提とした値札を付けるわけです。
私の経営する会社は、売主側に立った商売を行っているので、あくまで売主の利益を一番に考えます。売価が漏れては意味がないため、慎重に行います。値札の付け方も、高い値段で決まればそれに越したことはありませんが、乗っけすぎては見向きもされません。
値付けは最重要です。その見極めを、私たちは、限りなくプロの感覚でやっています。これは、素人が一朝一夕に再現しようとしても、できるものではないでしょう。しっかり入札で手を挙げてくれる人がいて、かつ叩かれない・・・そんな細心の注意が必要になるのです。