まず「お腹を空かせた業者」を探す
私事になりますが、先日、沖有人氏の著作『空き家は2018年までに手放しなさい』(SBクリエイティブ)を読みました。この本は、日本が直面する空き家問題に対する解決策として、土地の売却について書かれています。
土地を高く売る方法と、区分のワンルームマンションを高く売る方法に共通点が多数あり、驚きました。沖氏の本に書いてあるのは、都内で50坪以上、地方では200坪以上の土地を売るときに、誰に売るのが効果的かということです。
都内のように坪単価が高いところで、個人、50坪以上の土地を買う人は限られてきます。するとやはり、更地を買い取って、そこに戸建て分譲をする業者がターゲットになってきます。それに対して個人で高く売ろうとしても、まず土地を仕込んで、戸建て分譲をする会社がどこなのか、そもそも皆知りません。
では、そのためにどうすればいいのかというと、そういった土地を買い取る業者を熟知している仲介会社に対して、未公開の状態で情報を流してもらうのです。
いわゆる、売り物としての不動産情報がほしい――業界的には「お腹が空いている」という状態の――業者を探すべきです。業者が100社あれば、必ず1社くらいは、お腹が空いている業者がいます。
仲介業者を挟むことで売却金額が最大化!?
私たちの業界では、区分のワンルームマンションは、常に売買されています。そして、その中心となるのは買取会社です。
現状、不動産投資ブームが起こり、市況は盛り上がっています。買い手が増えたことによって、売り手市場となり物件価格はどんどん高騰しているのです。そのため、販売する側となる業者にとっては「おいしい時期」でもあるのですが、盛り上がった市場があっても、そこに流通させる商品がなければ儲けがありません。だからこそ、彼らは物件がほしいのです。
しかも金融緩和によって資金があるのですから、多少相場より高めの金額を打診されても、喜んで購入してくれます。買取会社と言えば、「買い叩かれるのではないか」というイメージをもつ人も多いと思うのですが、実態としては「お腹を空かせた業者」は多数存在します。
もちろん、個人投資家が買取会社に対して直接アプローチすれば、間違いなく安く買い叩かれます。しかし、そこで我々のような仲介業者を挟むことにより、売却金額を最大化できるのです。それというのも、私たちは、まさに沖氏の言う「お腹を空かせている業者」、つまり業務的にワンルームマンションの仕入れを行っている業者を、100社以上知っているからです。
私から言わせれば、それは当たり前のことです。なぜなら、これまで9年間、この仕事を専業にしてきた経験と実績があります。「この条件のワンルームならば、どこの業者が買うのか」と判断することを、業界用語で「どこにハマるか」という言い方をします。
100社あるといっても、私たちはその100社すべてに情報を流すわけではありません。物件を一目見たら、「ああ、これだったらあの業者にハマる」という会話が、現場で実際に飛び交っています。
各社によって、物件の得意分野が変わり、ほしがる物件も変わってきます。「この前は○○社の評価が良かったから、そこに流してみよう!」といったノウハウは、長らく区分マンションだけを取り扱ってきた経験からです。
買取会社の「ニッチなニーズ」を見逃さない
沖氏の本には、土地を買取会社に売れば、2割高く売れると書いてあります。まさに我が社も同様で、相場よりも2割高く売れている実績があります。その理由は、いわゆる段階性です。よく「3つの出口」と言っているのですが、買取会社のネットワークを活かして、未公開の状態でアプローチしていきます。
それで仮に価格が合わなければ、次に海外の投資家や個人の投資家へアプローチしていきます。それが高く売る秘訣です。そういう背景もあり、土地を高く売る方法と、区分のワンルームマンションを高く売る方法はとても似ていました。
私たちにとっては当たり前のことですが、一般的な不動産オーナーが、個人投資家の規模で買取会社を100社も知るはずがありません。ですから、そこがポイントになってくると思いました。
いわば「ニッチなニーズ」とも言うべき、各社のニーズを見逃さないことが重要です。本書に書かれているノウハウは、個人で実践できるものも多いですが、とはいえ個人投資家が買取会社に直接アプローチしても、スムーズに事は運びません。やはり、きちんとルートをもっている業者から、適切な買主に話をもっていくのが、高値売却への道なのです。