2024年の中国は「AI、バイオ、宇宙」産業重視へ
12月に開催された中央経済工作会議では、24年の経済政策の方針が決定された。
習近平政権は中国経済が需要不足であると認識していることもあり、積極的な財政政策と安定的な金融政策を維持する方針を示した。しかし、財政収入が減少していることから、「財政規律を厳格化する」としたため、インフラ投資等の財政支援は限定的と見込まれる。
最重要政策としては「科学技術の刷新による産業体系の現代化」を掲げており、デジタル経済、AI、バイオ、宇宙の商業利用等を進める方針を示した。国内需要の拡大としては、デジタル消費、グリーン消費、健康消費の発展を目指し、スマート・ホーム、旅行、運動等を新たな消費の成長分野として積極的に育成するとした。
また、不動産、地方債務等のリスクを取り除く必要があるとしながらも、「先に打ち立てて、後で壊す」として、景気が回復するまでは不動産等の改革が進まない可能性を示唆した。
GDP成長率は「+4.5%」の見込み
24年のGDP成長率は+4.5%と、23年の+5.4%から大幅な減速が見込まれる。
中国企業の業績回復が遅れているため、24年の可処分所得の伸びは限定的となり、小売売上高の伸びは鈍化を予想する。投資は、下押し要因であった不動産投資が23年の前年比9.3%減から24年は同5.0%減へとマイナス幅が半減すると見込む。
また、ITや製造業の投資も政府の政策に沿って相対的に高い伸びを維持するとみられ、固定資産投資全体の伸び率は23年の同2.9%増から24年は同3.5%増へ高まろう。なお、土地使用権販売の伸びはあまり期待できないが、政府は景気下支えのために23年と同等のインフラ投資の伸びを維持すると見込む。
輸出については、23年には欧米との摩擦拡大で輸出全体の30%を占める米国とEU向けが同2桁減となったこと、ドル高元安に伴い中国企業がドルベースの輸出価格を引き下げたとみられること等から、ドルベースの輸出の伸びは前年比5.0%減になったとみられる(元ベースでは同0.5%増と見込む)。
24年については、引き続き欧米向けの不振は継続するとみられるが、世界の経済成長率は3.0%程度を維持すると見込まれること、人民元の対ドルレートが7.0元/ドルあたりで安定すると予想すること等から、ドルベースの輸出は同3.1%増と、増加へ転じると考える。
四半期ベースでは、23年1~3月にコロナ後消費が拡大したため、今年の1~3月はベース効果で低い成長に留まろう。ただ、年後半からは新築住宅販売の持ち直しも見込まれ、景気は着実に回復すると見込む。
白岩 千幸
東洋証券株式会社 投資情報部
シニア・エコノミスト/ストラテジスト
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