不払いの「回数」と「信頼関係の破壊」が争点
③この点、被告は、本件更新料を支払わない理由を縷々述べて、原告が被告の要求に応じない限り、今後も本件更新料を支払う意思はない旨を明言するが、
本件更新料の支払義務は第1回更新及び第2回更新によってただちに生じており、原告が被告の要求に応じることは同義務の発生条件にも履行条件にもなっていないから、被告において本件更新料を支払わなくてもよいとする法的な根拠はない。
④このように、被告は、不払の理由にならないことを縷々述べて、本件更新料の支払を明確に拒絶していることに加え、
原被告間には賃料等保証委託や本件建物の火災保険の加入をめぐっても意見の対立があり、原被告間において建設的な話合いが行われることは困難な状況であるといえることをも併せ考慮すれば、
今後、被告において、原告に対し本件更新料を任意に支払うことは期待できず、本件更新料の不払の問題を原被告間の協議に委ねたとしても自主的な解決は期待できないものといわざるを得ない。
としたうえで、
「以上のように、本件更新料の不払の期間が相当長期に及んでおり、不払の額も少額ではないこと、
被告が合理的な理由なく本件更新料の不払をしており、今後も当該不払が任意に解消される見込みは低く、原被告間の協議でその解消を図ることも期待できないことなどに照らすと、
本件更新料の不払は賃貸借契約の当事者の信頼関係を維持する基盤を失わせるに足る程度の著しい背信行為であるということができる」
と述べて、賃貸人側からの解除の主張を認めました。
本件は、更新時期が2回経過したが2回とも更新料を支払わず、不払いから長期間経過しているという点を重視しているようにも見えますが、それ以外の事情(協議の経過など)も認定をしています。
そのため、更新時期が1回で不払いも1回だった場合に、本事例の射程が及ぶかどうかは明らかではありません。
いずれにしても、解除を主張する賃貸人側としては、不払いの回数・期間のみならず、信頼関係が破壊されているという点について、周辺事情も含めて主張・立証する必要があるということになります。
※この記事は、2022年8月7日時点の情報に基づくものです(2023年12月29日再監修済)。
北村 亮典
弁護士
大江・田中・大宅法律事務所
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