(※写真はイメージです/PIXTA)

明治維新期に文明開化が広まり、欧米文化の摂取や伝統的文化の復興といった西洋文化を取り入れた「明治の文化」が生まれました。思想や教育だけでなく、資本主義が確立し、工業化・都市化が進むことで、大きく変化していった人々の生活様式。『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)の著者で有名予備校講師の山中裕典氏が、1870年から1930年代にかけての日本の社会情勢について解説します。

旧暦→太陽暦が採用され、人びとの生活リズムに変化

文明開化は政府が近代化を推進した明治初期の文化です。

 

「近代」を理解するため西洋思想の摂取が進み森有礼らによる明六社が『明六雑誌』を発刊して啓蒙思想を広め(福沢諭吉西洋事情』『学問のすゝめ』、中村正直西国立志編』『自由之理』)、中江兆民が『民約訳解』で紹介した天賦人権思想が民権運動を支えました。

 

また、政府は近代国家の構成員の育成を目的に公教育制度を採用し、学制(1872)で国民皆学を示して小学校を重視し(負担に反発した学制反対一揆も発生)、教育令(1879)で自由主義的制度にしました。

 

宗教では、政府が神仏分離令で神仏習合を否定し(仏教に対する廃仏毀釈の攻撃も発生)、大教宣布の詔で神道国教化をめざしたが失敗し、紀元節(神武天皇の即位)・天長節(明治天皇の生誕)などの祝祭日で天皇権威の浸透を図りました。

 

一方、五榜の掲示でのキリスト教禁止は、のち撤回されました。太陰太陽暦(旧暦)の廃止と太陽暦(1873)の採用で、人びとの生活リズムが変化しました。

 

また、東京の銀座に煉瓦造・ガス灯が登場し、人力車が各地を走り、ざんぎり頭が文明開化の象徴とされ、牛鍋が流行しました。

教育制度が変化し、就学率が100%近くに上昇

明治の文化は、立憲体制の成立を経て近代国家が確立した時期の文化です。

 

●思想:1880年代後半に井上外交が行き詰まると、政府の欧化を貴族的だと批判する徳富蘇峰平民的欧化主義民友社の雑誌『国民之友』)と、欧化への懐疑を主張する三宅雪嶺国粋保存主義政教社の雑誌『日本人』)・陸羯南(国民主義、新聞『日本』)が論争し、日清戦争後には高山樗牛(雑誌『太陽』)の日本主義や徳富蘇峰の対外膨張論など、国家主義が拡張しました

 

●教育:森有礼文相による学校令(1886)で制度整備が進み(小学校の義務教育化や帝国大学)、教育勅語(1890)で明治憲法体制を支える忠君愛国が強調されました(奉読をめぐり内村鑑三不敬事件が発生)。

 

明治末期には教科書が検定制から国定制となって統制が進む一方、義務教育が4年から6年へ延長され、就学率は100%近くに上昇しました。私立学校として、慶應義塾(福沢諭吉)・同志社英学校(新島襄)・東京専門学校(大隈重信)・女子英学塾(津田梅子)が著名です。

 

●学問:外国人教師による西洋学術の導入に加え、日本人による研究も進展しました。自然科学では、北里柴三郎(ペスト菌、伝染病研究所)や志賀潔(赤痢菌)、高峰譲吉(タカジアスターゼ・アドレナリン)や鈴木梅太郎(オリザニン)、長岡半太郎(原子構造)、大森房吉(地震計)が活躍しました。

 

●出版・文学:大新聞(政治評論)と小新聞(娯楽中心)が発展し(『横浜毎日新聞』が初の日刊新聞)、総合雑誌(『中央公論』など)が登場しました。

 

明治初期の文学は、江戸文学系の戯作文学(仮名垣魯文)や民権運動を宣伝する政治小説でしたが、1880年代に欧化の影響を受けて登場した写実主義坪内逍遙の評論『小説神髄』、言文一致体による二葉亭四迷『浮雲』)は西洋文芸理論により客観的描写を重視し、近代文学の出発点となりました

 

1890年代には人間の自由な精神と感情表現を重視するロマン主義北村透谷の雑誌『文学界』、樋口一葉与謝野晶子)や俳句の革新運動(正岡子規)、1900年代には社会の現実をありのままに描く自然主義田山花袋島崎藤村)、明治末期には国家と個人の内面との対立を描く反自然主義(夏目漱石)が登場しました。

 

●芸術:民権運動を宣伝する壮士芝居川上音二郎がオッペケペー節を歌う)から発展した新派劇に対し、明治末期に登場した近代劇の新劇では、文芸協会(島村抱月)や自由劇場小山内薫)が海外の脚本を翻訳・上演しました

 

美術は、政府主導で西洋画が勃興し(高橋由一)、1880年代には伝統美術の復興で日本画が隆盛し(アメリカ人フェノロサ岡倉天心の尽力で東京美術学校)、のち西洋画は浅井忠(明治美術会)・黒田清輝(白馬会、『湖畔』)らの活躍で盛んになりました。

 

彫刻では伝統木彫の高村光雲と西洋ブロンズの荻原守衛、建築ではイギリス人コンドル(ニコライ堂)が著名です。

 

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※本連載は、山中裕典氏による著書『大人の教養 面白いほどわかる日本史』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

大人の教養 面白いほどわかる日本史

大人の教養 面白いほどわかる日本史

山中 裕典

KADOKAWA

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