(※写真はイメージです/PIXTA)

雇われとして社長業を続けているものの、相変わらず会社の実権はオーナーが握っている。もしオーナーが会社の資金も自由に操作をし、経営状況が悪化していた場合、その責任はどうなるのか…。そこで、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに雇われ代表の辞任について、森江悠斗弁護士に解説していただきました。

次に、「迅速な辞任を行う方法」ですが、辞任(委任契約の解除)は、相手方の承諾が必要のない単独行為ですので、「迅速」な辞任は実現可能です。

 

具体的な対応としては、取締役会において辞任の意思表示を行うか、取締役会非設置会社の場合は、全ての取締役に辞任の意思表示を行うことで辞任が実現します。

 

(なお、一般に、自身以外に代表取締役がいない場合の取締役の辞任の意思表示は原則として取締役会においてされるべきとされる一方で(東京高判昭和59年11月13日判示1138号147頁)、他の取締役全員に辞任の意思表示をした場合における辞任を有効とした岡山地判昭和45年2月27日ジュリ463号3頁も存在します。また、東京控決言渡年月日不明新聞257号20頁のように、株主総会を辞任の意思表示の相手方とする古い裁判例もあります。)

 

本件では、みっちさんの他に取締役を含むと思われる役員が4名いるとのことですので、みっちさんにおいても、取締役会で辞任の意思表示を行うか、それが難しい事情のある場合やそもそも取締役会が存在しない場合には、他の取締役全員に内容証明郵便を送付するなどし、辞任の意思表示を行うことで迅速な辞任を実現させることができます。

 

2つ目の質問、すなわち、「(唯一の株主である)オーナーは、相談者が代表を務める会社の取締役の1人ですが、取締役であれば会社の資金を勝手に移動させることは法的問題ではないのでしょうか。」の質問についてですが、まず、民事上の責任について、単に資金移動があったというだけでは、直ちに会社に対する民事上の責任が生じることにはならないと考えてよいでしょう。

 

なぜなら、本件の会社において、オーナーは取締役兼唯一の株主であるため、いわば会社の所有者として、資金移動について取締役としての任務懈怠責任(会社法423条1項)があるとしても、その責任を唯一の株主として自ら免除できるためです(会社法424条)。

 

他方で、本件のオーナーが、単なる資金移動を超えて、他人に不当な損害を与える行為を行うというケースでは、当然、本件のオーナーに対して第三者責任(会社法429条)や不法行為責任(民法709条)を追及することができます。オーナーに民事上の責任を追及したい場合には、このような行為を行っていないかを確認することが重要です。そして、どのような行為が民事上の責任を発生させるのかの判断は困難であるため、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

 

次に、オーナーにおいて、資金移動に関する業務上横領罪や特別背任罪等の犯罪が成立し、刑事上の責任が発生しないかについてですが、犯罪の構成要件は民事法上の責任の発生要件とは異なる上、刑事法上は会社法424条のような株主による責任免除規定がないため、オーナーが刑事上の責任を負う余地はあるといえます。

 

もっとも、前記のとおり、本件の会社における唯一の株主であるオーナーはいわば会社の所有者であり、原則として会社の資金移動についてオーナーには広い裁量が認められています。そのため、これらの犯罪の構成要件該当性が認められ、具体的犯罪として捜査・起訴がされるという可能性は必ずしも高いとはいえません。民事上の責任のときと同様、問題となり得る他の犯罪行為がないかを確認することが重要になると考えます。

 

この点についても、どのような行為が刑事上の責任を発生させるのかの判断は困難であるため、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

 

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