(※写真はイメージです/PIXTA)

人生には、さまざまな災難がつきものです。そして、それらに備えるためにはあらゆる視点を持って備えておくことが重要です。それが「広義の保険」という概念なのですが、一体どういうものなのでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

地震、火事、長生きリスク…人生の「悲惨な事態」にどう備える?

心配性な国民性といわれている日本人は、保険が大好きです。きっと保険に加入することで安心でき、不安が和らぐのでしょう。たしかに保険は、非常に困ったことが起きた際の悲惨さを緩和してくれる、ときに大変頼もしい存在です。一方で、深く考えずに不必要な保険に加入してしまう人もいるようですが、その話は別の機会に。

 

じつは、悲惨な事態を避けたり緩和したりするためには、保険会社との契約以外にも手段があります。たとえば、地震で家が倒壊するリスクに対しては、地震保険に加入する以外にも、家を耐震補強する、頑丈な家に引っ越す、津波を恐れて海岸から離れた場所に引っ越す…といったことで目的を達せられる場合も多いでしょう。こうした対策を筆者は「広義の保険」と呼んでいます。

 

余談ですが、南海トラフ大地震に対する備えとしては、ドルを持つということも選択肢です。復興資材の輸入が急増し、輸入代金のドルを買う人が増えてドルが値上がりすると予想されるからです。

老後資金の最高の備えは、なんといっても「公的年金」

長生きはいいことですが、老後資金に関していえばリスクです。そのため、老後資金が不安な人も多いようですが、老後資金に対する最高の備えは公的年金です。公的年金は、どれほど長生きしても受け取れますから、長生きしている間に老後資金が尽きてしまうリスクが大いに緩和されます。公的年金を大切にすることです。

 

サラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)は、年金保険料が給料天引きなので問題は少ないと思いますが、自営業者等は自分で年金保険料を支払わないと老後に年金が受け取れないので、しっかり支払っておきたいものです。

 

火災保険は、大勢から保険料を集め、運悪く火事になってしまった人に保険金を支払う、という制度です。年金も、運悪く長生きしてしまった人に老後資金を支払う、というものです。「火事にならなかったら保険料を損するので、火災保険には加入しない」という人は少ないでしょう。同じ理由で、公的年金の保険料もしっかり支払いましょう。公的年金については非常に重要なので、別の機会に詳述します。

老後資金は「預金・株・外貨」に分散するのがお勧めなワケ

高齢者のなかには、老後資金を全額預金(現金を含む)で持っているという人が多いようです。株や外貨は値下がりするリスクがあるから持ちたくない、ということなのでしょうが、筆者としては預金もインフレに弱いリスク資産なので、老後資金は預金、株式、外貨に分散して持っておいたほうが、悲惨な老後を避けるために有効だ(広義の保険)と考えています。

 

今後は少子高齢化による労働力不足が深刻化し、賃金が上昇していくでしょう。そうなれば、物価も上がるはずです。毎年1%のインフレが30年間続くと、老後資金で買えるものが30%も減ってしまうことになります(老後資金の目減り)。

 

もうひとつ、筆者が恐れているのは南海トラフ大地震です。復興資材のみならず、猛烈な物不足になって激しいインフレが発生する可能性が高いでしょうから、多額の預金を持っていても、惨めな老後は避けられないかもしれません。インフレに強い株や外貨を持っていれば、その分は目減りが避けられるので、最低限の老後資金は確保できる可能性が高いでしょう。

専業主婦が仕事をして厚生年金に加入する「すごいメリット」

専業主婦(専業主夫を含む)が働くことは、収入を得るという以外に「広義の保険」という効果も持ちます。配偶者が死亡したり失業したりするリスク、離婚するリスク等に対する備えとなるからです。

 

働き方によっては、厚生年金に加入できるかもしれません。そうなれば、老後に受け取れる年金が増えるので、老後への備えも充実します。サラリーマンの専業主婦のなかには「パートで稼ぎ過ぎると年金保険料を払う必要が出てくるから、働く時間を制限しよう」という人もいるようですが、思い切り働いて「年金保険料等を支払っても手取りが以前より増える」ことを検討してみてはいかがでしょうか。

老後は借家ではなく「自宅」に暮らそう

「自宅を持つべきか、借家に住むべきか」という論争は、あちこちで展開されています。その多くは、損得の計算をしたものです。ということは、どちらかが圧倒的に得だというわけではない、ということですね。

 

それなら、広義の保険の観点から、筆者は「老後は自宅に住む方が安心」だと考えます。長生きしている間にインフレが来ると、ただでさえ生活費で老後資金が枯渇しかねないところに、高騰した家賃を長期間にわたって支払い続けることになり、大変つらいですから。

 

そこで「定年までには家を持ちましょう」ということになりますが、定年まで借家に住んでいると、その間に住宅購入資金を貯める必要が出て来ます。よほど意思の強い人はともかく、意思が弱い人にとっては「老後資金と住宅購入資金を現役時代に貯める」のは大変です。それなら、若いときに住宅ローンで家を買い、ローンを返済しながら「贅沢できない生活」をしておいたほうが「老後の安心」という意味ではよいと思います。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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