(※写真はイメージです/PIXTA)

よかれと思って選択した結果、あとから大きな損失が判明して大後悔…。このようなケースでは、そもそもの情報の取捨選択が間違っていることが多いもの。大きな損をしてしまう人は、一体なにを間違えてしまうのでしょうか? 経済評論家、塚崎公義氏が解説します。

「無料情報の信頼性」について考えてみる

日本人は、情報は無料だと思っている人が多いといわれています。たしかに、ネット上には無料の情報が溢れています。情報を提供している人のなかには純粋に世のなかの役に立ちたいと思っている人もいるでしょうし、実際に役に立つ情報も多いと思います。

 

しかし、なんらかの意図を持って情報を流している人もいるでしょうし、間違えた情報やフェイクニュースなども多数流れて来ます。芸能やスポーツ等に関するニュースであれば、間違いがあってもフェイクであっても情報の受け手の損害は限定的でしょうが、そうでない場合も多いので要注意です。

 

信頼できるプロが発信しているものに代金を支払って入手する方が正確な情報が得られる可能性が高いでしょうし、結果としてはその方が得だ、という場合も多いはずです。

 

病気になったときに、自分で医学書を読んで勉強する人は少ないでしょう。多くの人はプロである医師に料金を払って診察してもらうはずです。自分で調べるのは大変ですし、基礎知識が乏しいと知らない単語や概念も多いですから、医師の診療を受けるのはコストパフォーマンスがいいわけです。

 

しかも、症状から想像もつかないような病気が根底にあって、それを医師が疑って検査をしてくれるという場合も多いでしょう。そうなると、単に「自分で調べるのは手間がかかる」というだけではありませんね。

プロに相談料を支払って「納得の結果」となるケースは多い

筆者は、確定申告を税理士にお願いしているのですが、自分では必要経費をどこまで認めてもらえるのか判断ができない場合でも、プロとしての経験で「ここまでは大丈夫です」というアドバイスがもらえるので、大変助かっています。

 

加えて、自分では思ってもみなかったような支出が経費として認められる、ということを教わったこともあります。たとえば子どもが20歳になったとき、学生だったので、親が年金保険料を払ってやったのですが、それも筆者の支払った社会保険料として所得税計算の際に控除してもらえるのです。まったく思っても見なかったので「子どもの社会保険料を親が払ったら控除してもらえるか」を調べたこともありませんでしたから、税理士に頼まなければ、余計な税金を支払っていたはずです。

 

父が永眠したときに、相続の手続きを信託銀行に依頼しました。自分で手続きをしようとすると大変面倒だ、と聞いていたので依頼したのですが、そのときに信託銀行の担当者から聞いた言葉が忘れられません。

 

「お客様にとっては一生に1度か2度のことでしょうから、そのために色々調べるのは大変でしょうが、私は毎日やっていますので、いまさら調べる必要もありません。したがって、短時間で業務を遂行することができます。つまり、お客様には、私の人件費に若干の上乗せをして料金をお支払いいただいても、決して高いとは思いません」

 

というのです。

 

考えてみれば、これも分業ですね。洋服や自動車を全部自分で作る人はいません。他人の作ったものに金を出して買ってくるわけです。医学や租税や相続等に関する情報も、同様だと考えればいいわけですね。

 

そして、金融商品等に関する情報も、同じです。プロに金を払って情報を得ることが、結果として得になる、という場合も決して少なくないのです。

一方で「インセンティブ」を理解していないと…

洋服や自動車とは異なり、金融商品については、「自分ではよくわからないから、店の人のアドバイスに従って買う」という人が少なくありません。そうであっても、最後に注文を出すのは自分ですから、買ったものが後から値下がりして損をすることになっても、自己責任です。店の人は責任をとったりしてくれません。

 

「素人である自分が決めるより、プロのアドバイスに従った方が儲かる確率が高いのだから、結果として損をしても仕方ない」という考え方もあるでしょうが、問題はプロが本当に客の利益のために真剣にアドバイスをしているのか、ということです。

 

金融機関の窓口の担当者は、利益率の高い商品を客に勧めるように上司から指導されているかもしれませんし、手数料を稼ぐノルマを課せられているかもしれません。

 

そうだとすると、「お客様にぴったりの商品です」を翻訳すると「当社の手数料率が一番高い商品です」になるかもしれません。「一番売れている人気商品です」を翻訳すると「当社の利益率が高いので販売員が熱心に客に勧めています。その結果として、売上高がナンバーワンになっているのです」になるかもしれません。

 

金融機関の販売員でなくても、「お客様にピッタリの保険を無料でご紹介します」というプロは、保険会社から契約の謝礼を受け取っているかもしれません。プロが見ず知らずの顧客に無料奉仕してくれるはずはありませんから。そうだとすると、「顧客が契約したときに一番多額の謝礼を支払ってもらえる保険」を顧客に勧めるインセンティブがあるかもしれませんよ。

 

そうだとすると、若干の相談料を払って中立的なプロのアドバイスを受けるということも要検討かもしれません。だれしも、数千円の相談料を惜しんで、数万円の余分な手数料を金融機関に支払う、といったような事態は避けたいですから。

 

本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。

 

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「幻冬舎ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

 

 

塚崎 公義
経済評論家

 

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