写真提供:THIS ONE

知られざる「日本の住宅とその性能」について焦点をあてる本連載。今回のテーマは「木造の中高層建築物」。脱炭素への取り組みをはじめとした環境意識の高まりで注目を集めていますが、高コストがネックとされてきました。しかし、その流れに大きな変化が生じようとしています。

これからの太陽光発電の経済的メリットを最大化するためには

住宅分野のGXの鍵を握っているのは、太陽光パネルのさらなる普及です。売電価格がかなり下がっているので、経済的なメリットがないと考えている方も多いようですが、まだまだそんなことはありません。太陽光パネルのメリットについては、以前説明した通りです(関連記事:『売電価格下落で「太陽光発電にうまみなし」という大きな誤解』)。

 

ただ、太陽光パネル設置の経済的なメリットをより大きくするためには、DR(デマンドレスポンス)を意識することがより重要になってきています。

 

これまでのところは、出力制御の対象は、10kW以上の太陽光発電の設置者が対象でした。そのため、10kW未満が一般的な戸建て住宅の太陽光は出力制御の対象ではありませんでした。ただ、今後は10kW未満も対象になる可能性も高いものと思われます。

 

少し専門的な話でわかりにくいかと思いますが、DR(デマンドレスポンス)を意識するということは、自家消費率の向上させることだと理解してもいいと思います。それにより、太陽光発電を設置する経済的なメリットがより大きくなりますということです。

 

2023年度の太陽光発電の売電価格は、容量が10kW未満で16円/kWhにまで下がっています。一方で、電力会社から購入する電気代(買電価格)は、基本料金と従量料金から構成されるために、単純には算出できませんが、2023年8月の東京電力の平均モデル(260 kWh/月)に基づく単価は、40.4円/kWhです(激変緩和措置による値引き前)。実際には、激変緩和措置による値引きがあるため、これよりも安くなっていますが、この制度に永続性があるとは思えないので、今後の買電価格は、40円/kWh以上の時代になると考えた方がいいでしょう。

 

ちなみに、筆者が2016年から直近までの東京電力の電気代(買電価格)の推移を計算したところ、平均するとなんと毎年約5.2%(激変緩和措置による値引き前価格)の値上がりが続いています。これほどの値上がり傾向がいつまで続くのかはわかりませんが、諸々の社会的な状況を総合的に勘案すると、基本的には電気代の値上がり傾向は続くものと思われます。

 

そして、太陽光発電は、もちろん昼間しか発電しませんから、昼間の余剰電力を16円/kWhで売っても、夜は40円/kWh以上で購入しなければならないということです。さらに固定価格買取制度(FIT)は、10年間で満了します。現在の東京電力の卒FIT後の買取価格は、8.5円/kWhと大幅に安くなっています。

 

ちなみに一般的な太陽光発電を搭載している戸建て住宅の自家消費率の平均は3割程度のようです。太陽光発電設置による経済的なメリットを最大化するためには、残りの7割の売電している電力を自宅で使用し、逆に夜間等の電力会社からの買電量を最小化するかということ、つまり自家消費率の向上がポイントになるということです。

 

【図表3】

自家消費率はどうすれば向上するのか?

では、自家消費率を向上させるためにはどのような方法があるのでしょうか?

 

まず思いつくのは、太陽光発電の電力を使って、昼間に家事、洗濯・食洗器等を行うことでしょうか? もちろん、これは有効です。ただ、最近はご夫婦で働いている家庭も多く、簡単ではないと思います。

 

設備機器の仕組みによって、自家消費率高めるとすると、まず思いつくのは、蓄電池の導入ではないでしょうか? もちろんこれもとても有効です。昼間太陽光で発電した電力を蓄電し、夜間に利用することができます。十分な容量の蓄電池ならば、電力会社からほとんど買電しなくても済むようになります。さらに災害時にも、周辺が停電で大変なことになっていても、蓄電池があれば、普段と同じような生活を送ることができます。

 

しかしながら、蓄電池はまだ高価なため、自家消費率を向上して経済的なメリットを享受する費用対効果という観点からは、微妙な段階のようです。ただし、例えば東京都は蓄電池導入に対して、今年度は3/4という非常に高い補助率の助成制度を設けていました。このような制度を活用すれば、一気に経済的なメリットを享受することができます。

 

次にEV(電気自動車)の導入が考えられます。EVの導入により、自家消費率を高めるのには、2段階の選択肢があります。まずは、太陽光で発電した電力でEVを充電し、極力売電せずに、太陽光発電の電力でEVを走行させることです。当然、これは自家消費率の向上に寄与しますし、住宅側の設備は充電用のコンセントを駐車場側に設けるだけなので、とても軽微です。ただし、昼間にクルマを利用していると、その間は充電(自家消費)はできませんし、EVに蓄電された電力を住宅で使うことはできません。

 

EVによる自家消費率向上の2段階目と言えるのが、V2H(Vehicle to Home)と言われるものです。これは、電気自動車用の充電設備としてだけでなく、電気自動車のバッテリーに貯められている電気を自宅へ流し、自家消費を可能にするシステムのことです。昼間の太陽光発電の余剰分をEVに充電しておき、夜間に住宅で使用する電力をEVから供給するというものです。いわば、EVを住宅用の蓄電池としても使用すると言うものです。当然、単にEVの走行用に使用するだけに比べれば、自家消費率が向上します。さらに、災害時にも安心です。

 

ただ、蓄電池と同様に、まだシステム構築に係る費用が多少高額なのが難点です。

 

ちなみに、蓄電池もV2Hも国の補助金の制度がありますので、検討してみる価値はあるでしょう。

 

【図表4】

 

最も手軽で有効な自家消費率向上策は「新しいエコキュート」

これらに比べて、より手軽で有効な自家消費率向上策としてお勧めしたいのは、従来のエコキュートと機能が異なる新しいタイプのエコキュートです。「おひさまエコキュート」と呼ばれる従来の機種では制約されていた太陽光発電による電力で最大限沸きあげることが可能なエコキュートです。

 

すでに、5社から商品化されており、単に太陽光発電の電力を最大限活用できること以外に、いくつかのメリットもありますので、太陽光パネルを設置される方は合わせて検討してみることをお勧めします。

 

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