今回は、「事業承継」か「廃業」かを判断するためのポイントを見ていきます。※本連載は、松村総合法律事務所の弁護士、松村正哲氏、税理士法人髙野総合会計事務所シニアパートナーの小宮孝之氏、株式会社ストライク代表取締役の荒井邦彦氏の共著『よくわかる中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』(ウェッジ)の中から一部を抜粋し、会社経営の「卒業」を主なテーマとして、事業承継 or 廃業の判断基準などをご紹介します。
「跡取り」が事業承継することが会社のためになるか?
自社が高齢・引退型だとしても、選択肢としては、事業承継できるのか、廃業になるのか、いずれでしょうか。
その判断をするためには、自社の適正な企業価値や、強み弱みを分析して把握しておく必要があります。
1.親族に事業承継させたい場合
たとえ、会社を子供や親族の跡取りに承継させる場合であっても、「事業の内容はさておいて、まずは跡取りが事業を承継するのが当然だ」ということにはなりません。価値観や生き方が多様化した現代社会においては、親の仕事だから子供が継ぐのが当然、というわけにはいきません。
事業承継の前に、本当に事業を承継させるのが後継者や会社の利害関係人のためになるのかを分析して検討するべきです。そのためには、企業内容の調査をして、経営状態を正確に整理し、把握しておく必要があります。
第三者承継では、自社の強み弱みの把握が重要に
2.社外の第三者に事業承継させたい場合
また、事業を社外の第三者に売却しようとする場合にも、まずは会社が第三者に買収されうるだけの事業性、将来性を有しているのかを検証する必要があります。
そして、事業を売却する場合、買主側だけでなく、売主側としても、自社の強み弱みを把握することにより、会社の売却価格を最大化させることができます。そのためには、自社の企業内容の分析が必要です。
これを、Seller’s Due Diligence(セラーズデューデリジェンス。売主側による企業内容の調査)といいます。
3.事業承継or廃業の判断基準とは
事業を承継させることができるのか、または廃業せざるをえないのかについては、以下の点がポイントとなります。
①事業規模が一定程度以上、大きいか
②事業に収益性があるか
③会社の財務体質について、実態貸借対照表上で資産超過か
④後継者や事業の承継先が確保できるか
⑤事業承継後も会社に残る役員、従業員の協力が得られるか
【図表 高齢・引退型 事業承継か廃業か】
松村総合法律事務所
弁護士
国内有数の大手法律事務所のパートナー弁護士を経て、2015年、「最高のリーガルサービスを、リーズナブルな価格でご提供する」を事務所の理念として、松村総合法律事務所を開設。
事業承継、M&A、事業再生を主要な業務としつつ、企業法務全般を取り扱う。
2008年~2012年、駿河台大学法務研究科非常勤講師(倒産法)を務める。
主要な受賞歴として、Chambers Global 2006、及びChambers Global 2005-06において、Corporate/M&Aの分野で高い評価を得る。
多数の会社更生、民事再生等の案件も手がけており、三光汽船のDIP型会社更生事件では、法律家アドバイザーを務めた。
主な著書・論文に、『中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』(ウェッジ)、『事業再生の迅速化』、『倒産法全書 上巻・下巻』(いずれも商事法務)、『論点体型 会社法4 株式会社Ⅳ(定款変更・事業譲渡・解散・清算)、持分会社』(第一法規)、『総特集 条件緩和企業の債権管理・回収』(『ターンアラウンドマネージャー』銀行研修社)他、多数。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載事業承継、M&A、廃業・・・会社経営からの「卒業」
税理士法人髙野総合会計事務所 シニアパートナー
公認会計士・税理士
法人の会計税務コンサルティングに精通しているFAS部門に所属。事業再生やM&A、移転価格税制、税務会計コンサルティング全般のほか、中小企業の事業承継、経営コンサルティングなど幅広いジャンルのサポートを行っている。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載事業承継、M&A、廃業・・・会社経営からの「卒業」
株式会社ストライク 代表取締役
公認会計士・税理士
1997年にM&A仲介・助言専門会社、株式会社ストライクを設立し、代表取締役に就任。インターネット上に日本初のM&A市場「SMART」を設立し、数多くの中小企業のM&Aを仲介するほか、企業評価やデューディリジェンスに携わる。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載事業承継、M&A、廃業・・・会社経営からの「卒業」