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高齢、経営悪化・・・状況によって変わる適切な「廃業」の進め方

今回は、状況によって変わる「廃業」の適切な方法を見ていきます。※本連載は、松村総合法律事務所の弁護士、松村正哲氏、税理士法人髙野総合会計事務所シニアパートナーの小宮孝之氏、株式会社ストライク代表取締役の荒井邦彦氏の共著『よくわかる中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』(ウェッジ)の中から一部を抜粋し、会社経営の「卒業」を主なテーマとして、事業承継 or 廃業の判断基準などをご紹介します。

経営者が高齢で、承継も無理なら「廃業」に

会社を事業承継できない場合は、廃業することになります。廃業とは何か。法律上の定義があるわけではなく、多義的に用いられている概念です。

 

ただ、一般的には、会社や自営業者が、手形不渡り、多数の取引先に対する買掛金等の支払ストップ、または債務の取り付け騒ぎ等の資金ショート(これらを支払停止といいます)を起こすことなく、法律上の倒産手続を用いずに、会社の事業を廃止して、会社を清算することをいいます。このような清算を、法的な倒産手続である特別清算と区別して、通常清算といいます。

 

廃業は、倒産手続とは異なり、利害関係人にかける迷惑や悪影響が比較的少なく、ソフトランディングで会社を清算する手法です。

 

廃業する場合、会社が資産超過か、または債務超過かという点が重要になってきます。

 

会社の経営状態が悪化しておらず、資産超過の場合は、債権者から債権放棄(債務免除)を受ける必要がありませんので、会社の借入金、未払金、買掛金等の債務を全額返済して、会社を清算することができます。

 

更に、会社が債務超過の場合であっても、その程度が軽い場合や、一部の債権者との協議、交渉によって、不足額について債務免除を受けられる場合は、社長が私財提供をすることや、債権の一部の放棄を受けることにより、会社を清算することが可能な場合もあります。このような会社清算の手法を、後述の倒産手続と区別して、一般に私的整理といいます。

業績が悪化した場合の選択肢は、廃業か倒産手続に

業績悪化型は、事業の先行きが不透明で将来性がなかったり、または業績が低迷して、そのままでは事業継続が困難なケースです。

 

そのような場合は、会社に将来性が感じられず、企業価値も見込まれないということになります。そのため、親族へ会社を承継させるべきかは、非常に悩ましい判断となるでしょう。また、社内の役員、従業員への承継についても、誰からも手が挙がらない場合も多いでしょう。まして社外の第三者への事業承継は、通常は困難となります。

 

そのようにして、事業承継先が確保できなかった場合、選択肢としては、①廃業か、②倒産手続か、ということになります。

「倒産手続」の具体的な内容とは?

「倒産」には、廃業と同様に、法律上の定義は存在せず、法律用語ではありません。

 

ただ、一般的な意味合いとしては、会社や自営業者に、資金ショート(支払停止)が生じたり、裁判所に倒産手続の申立てをしたりして、その経営が破綻し、正常な状態での事業継続ができなくなった状態をいいます。

 

そして、「倒産手続」とは、一般に、法的な債務整理手続である、破産、特別清算、民事再生、会社更生の各手続をいいます。

 

資金繰りに窮し、または会社が債務超過になった場合は、裁判所に対して、これらの倒産手続の申立てを行い、法律の規定に従い、債務を整理して会社を清算したり、再建することができます。

 

会社や自営業者が倒産した場合には、ほぼ例外なく大幅な債務超過の状態になっています。債務超過の場合、借入金や未払金、買掛金等について、その全額を返済することができませんので、倒産手続により、一部または全部の債務の免除を受けた上で、会社を清算することになります。

 

したがって、倒産手続は、廃業とは異なり、利害関係人にかける迷惑や悪影響が大きく、ハードランディングで会社を清算する手法です。倒産手続についての詳細は、第5章で説明します。

 

なお、資金ショートを起こした場合であっても、私的整理や倒産手続などの債務整理手続や、会社の清算手続が行われることなく、経営者が突然行方をくらまし、連絡が取れなくなって、そのまま事業を停止してしまう場合もあります。

 

これが、いわゆる夜逃げです。後始末をせずに全てを放り出して、倒産手続の申立てすらせずに、会社の関係者から逃げてしまうやり方です。いかにも無責任であり、会社の廃業の仕方としては、もっとも回避すべき手法です。

松村総合法律事務所 弁護士

国内有数の大手法律事務所のパートナー弁護士を経て、2015年、「最高のリーガルサービスを、リーズナブルな価格でご提供する」を事務所の理念として、松村総合法律事務所を開設。
事業承継、M&A、事業再生を主要な業務としつつ、企業法務全般を取り扱う。
2008年~2012年、駿河台大学法務研究科非常勤講師(倒産法)を務める。
主要な受賞歴として、Chambers Global 2006、及びChambers Global 2005-06において、Corporate/M&Aの分野で高い評価を得る。
多数の会社更生、民事再生等の案件も手がけており、三光汽船のDIP型会社更生事件では、法律家アドバイザーを務めた。

主な著書・論文に、『中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』(ウェッジ)、『事業再生の迅速化』、『倒産法全書 上巻・下巻』(いずれも商事法務)、『論点体型 会社法4 株式会社Ⅳ(定款変更・事業譲渡・解散・清算)、持分会社』(第一法規)、『総特集 条件緩和企業の債権管理・回収』(『ターンアラウンドマネージャー』銀行研修社)他、多数。

著者紹介

税理士法人髙野総合会計事務所 シニアパートナー 公認会計士・税理士

法人の会計税務コンサルティングに精通しているFAS部門に所属。事業再生やM&A、移転価格税制、税務会計コンサルティング全般のほか、中小企業の事業承継、経営コンサルティングなど幅広いジャンルのサポートを行っている。

著者紹介

株式会社ストライク 代表取締役 公認会計士・税理士

1997年にM&A仲介・助言専門会社、株式会社ストライクを設立し、代表取締役に就任。インターネット上に日本初のM&A市場「SMART」を設立し、数多くの中小企業のM&Aを仲介するほか、企業評価やデューディリジェンスに携わる。

著者紹介

連載事業承継、M&A、廃業・・・会社経営からの「卒業」

本連載は、2015年1月20日刊行の書籍『よくわかる中小企業の継ぎ方、売り方、たたみ方』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

よくわかる中小企業の継ぎ方、 売り方、たたみ方

よくわかる中小企業の継ぎ方、 売り方、たたみ方

松村 正哲,小宮 孝之,荒井 邦彦

ウェッジ

昨今では社長の高齢化や、産業構造の転換による苦しい経営に悩む中小企業が増えています。それゆえ事業承継、M&A、廃業の準備を進めることが、日本全体の重要課題といえましょう。 しかし、そのような中小企業の悩みに応える話…

 

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