30代、40代の持ち家比率はここ25年で大きく低下
データで見てきたように、世帯数はそれほど減らず、単身世帯等が増える今後の状況を考えれば、この先の賃貸住宅需要は底堅いと言えるだろう。
しかし一方では、空き家が大きな社会問題となっており、「家が余っているのではないか」との声も聞こえてくる。
この状況は、どのように判断すればいいのだろうか。
確かに空き家数は増えているが、その事実は、「賃貸住宅需要の先細り」ということではないというのが結論だ。
賃貸住宅需要がこの先もそれほど大きく先細らず、手堅い状況にあるということは、いくつかのデータが示しているが、ここでは、「持ち家比率」という視点から見てみよう。
持ち家比率がどの年代でも低下している。とくに、住宅一次取得のメイン層である30代・40代の持ち家比率はここ25年で大きく低下している。
図表を見ると、30代の持ち家比率は、1988年には約50%であったのが、2013年には、35%余になっている。また、40代においては、1988年には約70%だったのが、2013年には60%を割り込んでいる。一方、50代以上になると80%近くの方が、自身で所有する住宅(持ち家)に住んでおり、比率の低下も30代、40代ほどではない。しかしこれからは大きく減りそうだ。
【図表 年代別持ち家世帯率の推移(単位:%)】
当たり前でなくなった「マイホームの購入」
これまでの考え方では、若い頃は収入も少なく貯金も少ないので、賃貸住宅に住む。そして、高齢になり年金が主な収入となった時には支払いが苦しくなることが予想されるので、それまでには持ち家を購入しておきたいという心理が働いていた。仕事も終身雇用があたりまえで、定年になると一定額の退職金が手に入るため、さほどローンの心配をすることなく、マイホームを購入することができた。
しかし、終身雇用制度が実質的には崩壊し、労働の形態も、ライフスタイルも実に多様化している中、その時々で判断し決めるというライフスタイルを実践する人たちが増えている傾向もある。30代、40代になったら持ち家という志向が徐々に崩れてきている。
国の支援もかつてはそうした傾向を後押ししていた。1960年代から急速に経済成長した日本においては、都市部における住宅不足が大きな社会問題となっていた。それを解消するために、政府や行政機関は低所得者層に対して、公営の賃貸住宅を収入に応じた安価な賃料で提供することで、サポートしてきた。
一方、一定以上の収入がある層に対しては、賃貸住宅に関するサポートよりも、住宅ローン減税など税の減免を材料に、住宅購入(持ち家)促進を促してきた。