今回は、「住宅需要」が減少しても「賃貸住宅需要」は増加する理由を見ていきます。※本連載は、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長の吉崎誠二氏の著書、『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』(芙蓉書房出版)の中から一部を抜粋し、今後の「賃貸住宅需要」に関して解説します。

「単独世帯」の増加により、賃貸住宅需要も増える

前回述べたとおり、これから2035年に向けて日本の人口は、地方都市を中心に大きく減少していく。大阪を中心とした関西や、福岡などでも、10%近く減少する。

 

一方、世帯数は、2035年に向けて、2015年対比で東京・愛知など増える都道府県もある。一部のエリアを除いて、概ね対比マイナス10%以内といった状況だ。

 

こういった将来予測をみると、「住宅需要の減少」は避けられないなと思える。しかし、「住宅需要」と「賃貸住宅需要」では、若干異なるのではないかと思える。

 

賃貸住宅は、大ざっぱにコンパクトタイプ(主にワンルーム)、ディンクスタイプ、ファミリータイプという形で、広さ(部屋数)によって分けられる。総数では、コンパクトタイプが多いが、それぞれある程度の数がある。タイプはこのように分けられるが、賃貸住宅の1つの住戸(住宅)を利用している人数は、圧倒的に1人もしくは2人が多いと予想される。

 

つまり、賃貸住宅の需要の多くを支えるのは、単独世帯もしくは、2人暮らし世帯なのだ。

 

図表1は、国立社会保障・人口問題研究所による、2035年の単独世帯(一人暮らしの人)の数を予測したデータだ。

 

単独世帯数は日本のほとんど全県で大きく増加する。例えば人口が30%以上、世帯数が15%以上減少する北東北の各県などにおいても増加する(正確には、いったん増えて、その後ゆるやかに減る)。

 

その理由はさまざまあるが、少子高齢化の流れは、単身世帯を確実に増やす。高齢の夫婦の世帯で夫婦のどちらかが亡くなり、配偶者が単身者世帯になるというケースは高齢化社会が進めばますます増加するだろう。

 

一方、晩婚化や離婚件数の増加も世帯数を増やす大きな要因だ。この先、生涯独身の人が増えると予想されているが、そうすれば単身世帯もさらに増えるだろう。

 

こうした、単独世帯の方々の多くは賃貸住宅に住むことが多い。高齢者の方は老人対象の賃貸住宅に、現役世代の単独世帯の方々は一般賃貸住宅に住むことになっていくだろう。

 

【図表1 将来世帯予測(単独世帯)(2015年=100)】

(国立社会保障・人口問題研究所の資料より作成)
(国立社会保障・人口問題研究所の資料より作成)

離婚率の上昇により賃貸住宅需要は高まると予想

さらに、別の注目すべきデータがある。

 

親ひとりと子供からなる世帯の今後の予測だ(図表2)。この世帯の多くは、残念ながら離婚に至ったケースだろう。現在の日本では、離婚件数が増加している。2014年における離婚件数は22万2107件、2013年度の結婚件数を離婚件数で割った「離婚率」は35.0%にまで上昇しており、三組に一組が離婚していることになる(総務省発表、平成26年人口動態統計〈確定数〉の概況より)。

 

グラフを見れば、親ひとりと子供からなる世帯の増加は一目瞭然だ。親ひとりと子どもからなる世帯の多くは、賃貸住宅で暮らすことが想像できる。

 

こうしたデータを丹念に見ていくと、人口減で「住宅需要が減る」ということイコール「賃貸需要が減る」ということではないことがわかる。これは大都市だけのことではなく、地方都市でもいえることだ。

 

【図表2 将来世帯予測(ひとり親と子の世帯)(2015年=100)】

(国立社会保障・人口問題研究所の資料より作成)
(国立社会保障・人口問題研究所の資料より作成)

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    本連載は、2016年2月15日刊行の書籍『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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