大都市の「世帯数」は、今後20数年大きくは減らない
人口動態と賃貸住宅需要はどのような関連性があるのだろうか。
総務省の発表データでは、2005年ごろをピークに日本の人口はわずかずつ減り始めているということらしい。国勢調査の最新である2013年のデータを見てみると、近年減少というよりも、伸びが止まりほぼ横ばい状態であることがわかる。
しかし、国の研究機関である国立社会保障人口問題研究所の将来予測によると、約20年後の2035年の日本の人口は今よりも、かなり減り、1億1000万人程度になるようだ。
こうした予測から、賃貸住宅の需要は今後減るのではないか、と懸念する人も多い。図表1を見るとわかるように、都市部においては、人口はあまり減らない。四大都市の中では、首都圏はほとんど減らず(東京都/2015年対比マイナス1・5%)、関西エリアと福岡がやや減るという程度だ(大阪府/マイナス8・5%、福岡県/マイナス7%)。一方で、地方都市では2035年の人口が2015年対比マイナス30%を超える地域もある。
【図表1 将来人口数予測(2015年=100)】
しかし、住宅需要のことを論じる際には、人口そのものよりも世帯数を意識した方が、現実的であり、より正確な判断をすることができる。二世帯住宅などを除いて、一般的には一世帯に対し一つの住居が必要だからだ。
図表2を見るとわかるように、大都市においては、世帯数は向こう20数年大きく減らない。東京都や愛知県では2035年の世帯数は、2015年対比で5%程度増える見通しだ。地方主要都市においても、2035年の世帯数はこれから減ったとしても2015年対比マイナス10%未満の県が多い。
【図表2 将来世帯数予測(2015年=100)】
「人口減少」でも「賃貸住宅の需要」は減少しない!?
地方においては、人口も世帯も減っていくことは確実だ。だから、地方都市での賃貸住宅経営はこれから厳しくなるのではないか、という声も聞かれる。
人口が減っていくわけだから、住宅はもう必要じゃないのではないかということだ。もちろん、住宅そのものの需要(必要総数)は減っていくことは間違いない。しかしながらそれが、イコール賃貸住宅の需要が減るとは限らない。ここは重要なところだ。
ポイントは、①単身世帯、ひとり親世帯の増加、②持ち家志向の低下、③地方都市の中心部集中化(コンパクトシティ等を含む)の三つだ。次節以降で詳しく述べていく。