今回は、インフレとデフレでは、住宅賃料がそれぞれどのように変化するかを見ていきます。※本連載は、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長の吉崎誠二氏の著書、『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』(芙蓉書房出版)の中から一部を抜粋し、今後の「賃貸住宅需要」に関して解説します。

強い相関関係が見られる「インフレ率」と「住宅賃料」

ここで、インフレ(デフレ)と住宅賃料の関係について、データをもとに考えてみたい。総務省が測定(集計)・分析し、データを公開している消費者物価指数CPI。これは、物価の変動をウオッチするデータとして知られた指数であるが、この項目の中に「住宅賃料」は含まれている。

 

図表は、IMFが発表しているインフレ(デフレ)率と総務省が発表しているCPIの家賃、それぞれの前年対比を示している。

 

これら2つのデータの相関係数を単純計算すると0.72となり、強い相関関係にある。

 

【図表 コアCPIとCPI家賃の前年同月比の推移】

(総務省統計局「全国消費者物価指数」より作成)
(総務省統計局「全国消費者物価指数」より作成)

 

ただ、1980年代と2000年代の状況を鑑みると、この30余年を一括りに計算するのは大雑把すぎると思う。そこで、1980年~1991年までは経済成長期で、また、率だけで見ると、1994年くらいまではプラス(インフレ期)であったと考えて、「インフレ期」と設定、以降1994年~2013年までをマイナス(デフレ期)と仮定して、2分割して計算してみると、それぞれの相関係数は、前者は0.65、後者は0.41となっている(相関係数は、1~0.7が「強い」、0.7~0.4が「やや強い」、0.4から0.2が「弱い」とされている)。

デフレが続いても、住宅賃料は下がりにくい

こうしてみるとわかるように、インフレ期には、つまり物価上昇とともに家賃が上がる傾向が強い。しかし、マイナス期(デフレ)においても、インフレ期ほどその影響を受けず、家賃は横ばいとなっていることがわかる。

 

今後もこの傾向は続くと思われる。つまり、インフレが進むと、ジワジワと住宅賃料はあがる(=投資家から見ると、収入は増える)。一方、それほど大きくないデフレが続いたとしても、住宅賃料が下がる可能性は低い。

本連載は、2016年2月15日刊行の書籍『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

吉崎 誠二

芙蓉書房出版

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