今回は、人口が減少しても「賃貸住宅需要」が下がらない場所とはどこなのかを見ていきます。※本連載は、社団法人住宅・不動産総合研究所理事長の吉崎誠二氏の著書、『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』(芙蓉書房出版)の中から一部を抜粋し、今後の「賃貸住宅需要」に関して解説します。

今後ますます増加する「大都市圏」への人口流入

日本の人口は2005~2006年ごろをピークに増加が止まり、現在は横ばいか微減状態となっている。

 

一方で、持ち家志向の低下、単独世帯数の増加など、賃貸住宅需要の底堅さを物語るようなデータもある。今後の日本の人口動態は、賃貸住宅経営をされる方はもちろん、多くの国民の関心事だろう。

 

全体の人口が横ばい、もしくは微減を続けるなか、国内の県と県との間、都市と都市(地方市町村も含む)の間において、人口の移動が進んでいる。地方から都市部へは相変わらず、人口移動が続いている。人口流入が多い三大都市圏(首都圏・中京圏・関西圏)における人口はますます増加していくだろう。

 

逆に、北東北、山陰、四国、南九州などは人口流出が多く、人口は減少している。

 

こうした人口移動は、県と県の間だけではなく、エリア内でも県内でも人口の移動が起こっている(図表)。

 

【図表 転入者の比率が高い都市】

(総務省統計局「平成26年住民基本台帳人口移動報告」より作成。
上位15都市まで)
(総務省統計局「平成26年住民基本台帳人口移動報告」より作成。 上位15都市まで)

 

例えば、北海道では全体の人口は減りながら(県外流出過多)、その一方で道内最大都市の札幌市の人口は増えている。道内から札幌への流入が多いのだ。日本全体における東京状態が北海道内での札幌市というわけだ。

 

ほかにも、単一都道府県ではないが、九州全体で見ると、各地から福岡市への流入が増えている。これは、福岡市の「リトルトーキョー化」と呼んでいい状態だ。

 

つまり、全体的に見ると、大都市圏への人口流入の傾向は変わらず、現在(2015年)、日本の人口の1/2超が三大都市圏に住んでいるが、この傾向はさらに加速するだろう。

 

また、逆の観点から見れば、先に述べた人口流出県における人口減少も止まらないと予想されている(国立社会保障・人口問題研究所による)。

 

この日本全体の傾向は、県単位での小さなエリアでも同様のことが起きる。人口減少が続く県であっても、県内主要都市には、県郊外エリアからの移動が起こるだろう。

「コンパクトシティ化」による都市の中心地へ人口移動

さらに、多くの都道府県・市町村が力を入れている政策である「コンパクトシティ構想」もこの中心都市への移動に拍車をかけるだろう。

 

コンパクトシティとは、政府が地方都市などで推進する政策で、「都市の中心部に行政、商業、住宅など様々な都市機能を集中させる」ことだが、現在の地方都市の中には、まだまだ効果的な都市機能を持った街づくりができているところは多くない。

 

コンパクトシティ化によって、都市自体の機能が大きく変わり、住民にとって本当に住みやすく暮らしやすい都市が実現すれば、また、新たな人口移動が起きるだろう。

 

このように人口の移動に拍車がかかると、一時的な住宅としての賃貸住宅需要は伸びると予測できる。

 

つまり、このような状況があてはまる都市においては、たとえ人口が減少しているとしても、その都道府県内の中心的な都市では賃貸住宅需要は維持すると考えてもいいだろう。

本連載は、2016年2月15日刊行の書籍『データで読み解く賃貸住宅経営の極意』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

データで読み解く 賃貸住宅経営の極意

吉崎 誠二

芙蓉書房出版

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