不動産業界の活況を受け、賃貸住宅の賃料も上昇基調
2012年末から、自民党政権に代わり経済政策が次々に施行されると、株価は上がった。2013年初めに比べ、2015年末の日経平均株価は2倍近くなり、大都市部の地価上昇、不動産価格の上昇など、住宅・不動産業界は活況になった。2009年頃から数年間、新興系デベロッパーが苦境に立たされていることに代表されるように、不動産業界では厳しい時代が続いていたが、そこから随分盛り返してきた。
2014年に入ると、比較的反応が遅いといわれるオフィス賃料の上昇も顕著になってきており、オフィス賃料の上昇は、大型先進ビルだけでなく、中クラスのビルにまで波及してきている。
景気の波を受けながらも、その影響が現れるのが遅いとされる賃貸住宅の賃料も2014年後半から徐々に上昇のキザシが見え始めてきた。
図表のように、首都圏では、1R(ワンルーム)、DK(ディンクス)、FA(ファミリー)、いずれのタイプの物件においても賃料上昇基調にある。
【図表】首都圏の1R、DK、FA賃料の推移(2005年1月=100)
賃料が急激に変動することはない「賃貸住宅」
賃貸住宅の賃料は、入居者からの価格に対する圧力があまり強くないこともあり、高額賃料の物件を除いてデフレ期でも賃料が大きく下がることは少ない。また地方都市の郊外にある物件で、空室が長く続いているような物件を除けば、入居者が順調にいれば賃料が大きく下がることはない。
一方、好景気の局面でも、その反応は遅い。たいていの賃貸住宅の契約は2年ごとの更新で、当然その間は賃料に上下はない。さらに、更新時に一気に賃料を上げると、「それなら、別の物件に引越ししようか」と入居者は別の選択肢を探し始めることが比較的簡単にできるため、オーナーサイドも簡単に賃料アップが打ち出しにくい。
オフィスビルに比べて引越しも手軽で、代替物件も多く存在する。このようなことから、上昇局面に入っても、急激に上昇することはなく、ジワジワという感じで上がっていくのだ。
しかし、総務省の物価統計の項目としても定点観測されているように、他の項目に比べて遅いながらも、インフレ・デフレ等の景気の影響を受けることに間違いない。次回、このことを考えてみたい。